深田萌絵オフィシャルブログ(http://www.fukadamoe.info/)が高負荷で閲覧できない場合に使用するバックアップ用ブログです。表面からは分からない市場の裏事情を、深田が赤裸々に描いていきます。

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2015年12月31日木曜日

台湾秘密結社青幇と中国人民解放軍:科学技術振興機構のサーバーの場所が人民解放軍基地内にある証拠

科学技術振興機構のウェブサイトのサーバーがアルファアイティーシステム藤井一良を通じて、保定市にある人民解放軍の地下データセンターのサーバーに入っているという話の証拠写真を出しますね。

この科学技術振興機構が主催の日中大学フェアのウェブサイト。




アルファアイティーシステムが管理運営と書いてます。
で、このウェブサイトのサーバーの場所を調べると。



なんと。



保定市。人民解放軍最強陸軍空軍と通信部隊が設置されているとこです。

Googleマップで見ると、なんと田園地帯。



知り合いの中国人に聞くと、保定市の近隣には地下三十階建ての解放軍最大地下基地があって、そこになかにデータセンターがあるのだけど、そこにサーバーを置けるなんてすごいことだと言ってました。

普通の中国人にもできないことを、なんなくやってしまうアルファアイティーシステムの藤井一良とは何者なのでしょうか。

それよりも、科学技術振興機構、国民の血税で人民解放軍に利益供与?

と思うと、ちょっと悲しいですね。

事件サマリー:第33回戦 年賀状



エリが消えて数カ月。
ゼロから再出発した会社は支持者たちに支えられて幸運にも持ち直し、展示会にも出店できるようになった。

念願の展示会出展は四年目にして叶った。

パシフィコ横浜にある展示会で小さなブースを構え、深田は新製品宣伝のビラ配りをしていた。
「え、これ、本当に無線なの?」

「はい!良かったらシステムをご覧ください」
最新の低遅延型動画伝送システムに対する引き合いは多かった。
高画質、高速伝送、安定出力、どれをとっても世界最高だ。
それを自分のようなお姉ちゃんが売っているとあって、業界でも話題になっていた。

『もっと早く展示会に出展できていたら・・・』
マイケルの技術に惚れ込んでいたのは、むしろエリだ。
エリはこの技術を広めたいと言って、展示会に出ては『自分達もいつかは』と言っていた。
今、ここに二人で一緒に立っていたら、エリは喜んで集客しただろう。

マイケルはエリの話をしなくなった。
自称メンタリストの深田の母が東京のオフィスに来たとき、
「未練がましい女、発揮やな。エリちゃんなんかに対して」
と言ったのをマイケルは覚えているのだ。

マイケルは深田に気遣って『エリ』と名の付くものを全てに違う名前に与えた。

弁護士のエリザベスを『おばさん』、キノコのエリンギを『長マッシュ』、取引先の別のエリを『モモちゃん』と勝手に名前を付けて呼ぶ始末になった。

『おばさん』と呼ばれたエリは怒り、『モモちゃん』と名付けられたエリは喜んでいる。

頭が良い奴は気遣いもひねくれているので、こちらの対応も面倒臭い。

「これ、すごいですね」

声を掛けられて現実に戻る。
スーツの男性が興味深そうに新製品を見ている。
「これ、全てチップ処理なので早いんです」
動画の処理は通常重たい。それを完全チップ処理にしているので高速化が図れるのだ。

「実は自動車メーカーがうちのお客さんなんですけど、受託の仕事とかやっていますか?できたらお願いしたいことがあって」
そう言って、彼はソフトウェア会社ソフト社(仮名)の吉田氏(仮名)が名刺を出した。

「是非、お願いします!」
ようし、顧客ゲットだ!

後日、ソフト会社の吉田氏がオフィスにやって来た。
カメラもディスプレイも基板も、デモ機は万全の態勢だ。スイッチオンするだけで、いつでもオッケー。

「人工知能の開発できますか」

「え?」
人工知能?そんなの製品リストにもなければ展示もしていない。
「車の自動制御に人工知能が欲しいんです」
深田はマイケルを振り返った。
人工知能開発なんて、うちの業務外だ。

「人工知能なら既にコアはあります」
深田は目が点になった。四年間一緒にやってて、人工知能が開発できるなんて初耳だったからだ。

「うちのエンジニアはミシガン大学で人工知能の研究をやっていました。Googleの検索エンジンを開発したCTOより、彼女のほうが成績は良かったんですよ。それに、元々巡航ミサイルの為に人工知能を開発したこともあるので、車なら相性がいいかもしれない」
マイケルは淡々と続けた。
しかし、どこまで行っても引き出しの多い奴だ。

「すみません、ただ、今期は開発費が少なくて1000万円くらいしかないんです」
通常、人工知能の開発は十億単位なので、桁が2つ足りない。
深田は、「ハァ?」と言いそうになったがマイケルは「いいよ」とアッサリ答えた。

「1000万円で?」

「1000万円でもいい。ただし、簡易版だけだ」
マイケルは応えた。

「そうですか!是非お願いします!」
ソフト社は喜び勇んでスキップして帰っていった。

「マイケル、どうするの?」

「なんだ?」

「人工知能」

「作れるぞ」

「作れるのは分かる!でも、エンジニアも足りないし、コーディングの人員どうするのよ!1000万円なんて安値で引き受けたら、外注費であっという間に赤字よ」
深田はキレた。ありものを売れば、コストを抑えられるけど一から開発となると金ばっかりかかって仕方がない。
今は、確実に黒字のプロジェクトしか取りたくないのだ。

「大丈夫だ。権利は渡さないし、ライセンス料も毎年貰う。プログラマーだけ確保すれば、何とかなる」

「そのプログラマーの調達で世界中が人材難なのよ!」
SNSの台頭で、殆どのプログラマーはFacebookやオシャレなシリコンバレーの会社に年収20万ドル以上で流れてしまっている。

「俺には案がある」
そう言ってマイケルは笑った。

次にソフト社に打ち合わせた時も感触は良かった。
「もう発注準備はしています。ただ、車メーカーさんの要望で納品は来年の2月20日でお願いしたいんです」

「2月20日!?」
いま既に、クリスマス前だ。2ヵ月で仕様固めからコーディングなんて無理過ぎる。

絶対に無理と深田が言いそうになったところ、「大丈夫」とマイケルは事もなげに答えた。
これまでのパターンで行くと、常人が不可能だと考える開発もマイケルが「大丈夫」と言った時は実現してきた。実績はあるけど、プログラマーが足りていないので不安で仕方がない。

「すみません、それより発注間に合うんですか?」
深田は事務処理の心配をした。
マイケルのことなので、やると言ったら裏の手を使うのだろうけど、問題は日本企業の体質だ。契約書やら信用チェックまで何カ月かかるか分からない。

「そこなんですよ、発注書が出るのが今だと早くて年末とか、下手したら1月過ぎるんですよね。それでも、やってもらえませんか?」

「ダメで・・」
「いいよ」
マイケルがアッサリ答えた。
「ギリギリでも発注書が来れば納品するよ」
そう続けた。
それを聞いてソフト社はまたルンルンになって帰っていった。

深田は頭を抱えた。発注書が来る前に仕事始めたらトラブルの元だ。
「マイケル、おかしいよ。これまで詐欺を働こうとしてきた会社と同じで発注書なしで仕事させようとしているんじゃない?」

「俺、人工知能の方が好きなんだよね」
マイケルの答えに、深田はお茶を吹き出した。
作り上げた世界最高の新製品にはもはや興味が無いようだ。

マイケルは天才過ぎてマイブームの移り変わりが激しい。
好きなものを作るだけで、あらゆる人が金を積んできたので自分が作りたい物以外に興味が無いのだ。

「ところでマイケル。人工知能なんて、いつの間に作ったの?」

「米軍の仕事している時だ。うちの製品には全て人工知能が入っている」

「ハア?」
知らなかった。

「お前、バカか?ソフトウェアをチップにしただけで処理が速くなるなんて伝説だ。俺はチップに人工知能を埋め込んで無駄な処理はさせていない。だから早いんだ」

「そういう事だったの?何それ、企業秘密?」

「当たり前すぎてお前に説明するのを忘れていた」

「言ってくれてたら、会社のホームページで大々的に宣伝したのに!このバカ!!」
マイケルは頭が良すぎて、たまに抜けているのだ。
人工知能なんて受託開発だけで数十億は取れるのだ。
そんなことを知らなかったなんて、と、深田は地団太を踏んだ。

「おい、待て。会社のウェブサイトに人工知能の事を載せてなかったのか?」

「載せるわけないでしょ。社長の私が知らないんだから」

「じゃあ、なんで彼らは来たんだ?」
マイケルの言葉でハッとなった。

言われてみればそうだ。
人工知能開発は、ウェブサイト開発とはエンジニアの知能レベルが1万倍違う。
人工知能開発に人間知能が必要だと言われている分野だ。
通常は実績のある会社にしか発注しない。

振り返るとマイケルは頷いていた。
「発注書が来るまでまとう。これも中国共産党の罠かもしれないからな」

「エリかも」

「エリは、俺が人工知能開発していたことを知らない。中共だけだ」
マイケルは応えた。

その日から、深田はソフト社からの発注を待った。
メールで催促し、電話で催促もした。
返事はいつも「お願いする為に発注準備をしていますので、先にプログラミングを始めておいてください」だった。

年の暮れになっても発注書は来ず、聞けば「今用意しているから、開発だけ始めておいてくれ」とだけ言われて、仕方なく12月31日に深田は実家へと帰った。

実家のダックスフントの太郎を抱っこして、年始は布団の上でゴロゴロしていた。
太郎は大人しいM男だ。
どんなに意地悪しても怒らない。

太郎の耳を引っ張って遊んでいると、
「また、エリちゃんか」
と母さんがポストを開けながら呟いた。

「え、何、母さん」
エリがどうしたのかと思って起き上がった。

「いや、あんたの旧会社の郵便物をこっちに転送してるけど、エリちゃん宛ての郵便がけっこう来るねんな」
年賀状をチェックすると数枚ほどエリの年賀状が混ざっている。

「あれ?」
ソフト社の吉田さんがエリ宛に年賀状を書いている。『今年も宜しくお願い申し上げます』ってどういうこと?

吉田さん、エリが失踪した数カ月後に知り合った人だぞ。

「なんだ、そういうことか」
深田は笑いがこみ上げてきた。
私を潰すためには、そこまでやるのか。

マイケルにそのことをメールで報告すると返信が来た。

「プレイヤーはエリだが糸を引いているのは間違いなく共産党だ。エリは人工知能の事を知らない。それに、上場しているソフト社がエリ個人の為には動かない。裏で巨額の金が動いている」

彼女は、消えたかのように見えて影のように付きまとうようになった。
私の周囲に現れる全ての人間を利用するのだろうか。

「母さん、私、また友達できるかな?」

「あんた、その前に結婚しーや!」
(´・ω`・)エッ?

TO BE CONTINUED

事件サマリー:第32回戦追記 男はマイケルに夢中



「ハッピークリスマス」
シリコンバレーにいるマイケルから電話があった。

「私はアンハッピーだけどね。マイケルは誰かと過ごすの?」
と深田は応える。

「俺に家族はいない」

「女はいないの?」

「お前な、髪も薄い、太った50代の俺に金が無ければ女が付いてくるはずないだろう」
マイケルは冷静に答えた。

「かしこっ。マイケル、さすがIQ200だね」
深田は心の底から感心した。

「冷静になれば、全てのイケてない男が理解できることだ。知能指数が低くても分かるはずだ」
マイケルは淡々と答えた。自己中心的な男だが、客観性は保っているらしい。

マイケルと会社を始めてから色んな男が寄ってくる。
ところが、最初は私を好き好き言っても、気が付けば男たちはマイケルに夢中だ。
もちろん、男たちはマイケルが好きなんじゃない。
マイケルの技術さえ盗めば金持ちになれるから無我夢中になるのだ。

彼の技術の前には愛もかすむ。

いや、金の前か。

それでは、男が女を愛せるようになるためには、いくら掴めば気が済むのだろうか。

事件サマリー:第32回戦追記 男はマイケルに夢中


「ハッピークリスマス」
シリコンバレーにいるマイケルから電話があった。

「私はアンハッピーだけどね。マイケルは誰かと過ごすの?」
と深田は応える。

「俺に家族はいない」

「女はいないの?」

「お前な、髪も薄い、太った50代の俺に金が無ければ女が付いてくるはずないだろう」
マイケルは冷静に答えた。

「かしこっ。マイケル、さすがIQ200だね」
深田は心の底から感心した。

「冷静になれば、全てのイケてない男が理解できることだ。知能指数が低くても分かるはずだ」
マイケルは淡々と答えた。自己中心的な男だが、客観性は保っているらしい。

マイケルと会社を始めてから色んな男が寄ってくる。
ところが、最初は私を好き好き言っても、気が付けば男たちはマイケルに夢中だ。
もちろん、男たちはマイケルが好きなんじゃない。
マイケルの技術さえ盗めば金持ちになれるから無我夢中になるのだ。

彼の技術の前には愛もかすむ。

いや、金の前か。

それでは、男が女を愛せるようになるためには、いくら掴めば気が済むのだろうか。

事件サマリー:第32回戦 ダイヤモンドの大きさは愛の大きさ


持っているブランド物の多くを売り、会社を建て直した。
自宅の棚には、残されたティファニーの水色の箱が見える。
元彼から貰った1カラットのダイヤモンドはなんとなく売りそびれたのだ。
「ま、もう二度と会うこと無いんだけどね」
ずずず、と、熱い紅茶をすすった。
元彼は自分に本気ではないと思っていたあるクリスマスの日に、「なんか、欲しいものある?」と聞かれて「別に」と答えた。本当に欲しい物は特に無かった。
彼は、「別にって何だよ」と言った後、黙ってティファニーに入って、このダイヤモンドを買ったのだ。
あまりの値段に驚いた。
「俺がお前に本気だったってこと、分かった?」
驚きのあまり声も出なかった。
彼の愛の深さに自分は気が付いて無かったと反省した。
そして、ラブラブ彼の部屋に入るとハリーウィンストンで100万円のダイヤモンドを買った前日付のカード明細が机の上に無造作に置いてあった。
「あんたさ、毎日違う女にダイヤモンド買って、何が面白いワケ?」
深田は彼を白い眼で見た。
「ちょっと待て!お前のダイヤモンドの方がずーっと高かったの、値段見ただろ!?そのダイヤモンドの大きさを見ろ、俺の愛の大きさだ!」
彼はそう言って、深田の肩をポンと叩き、それから程なくして、どうしようも無い二人は破局した。
「別に未練は無いんだけどね」
自分を一瞬でも好きだと言ってくれた人が無理して買ってくれた物を粗末にするのは気が引ける。
ルルルと音がなって携帯を見ると、その彼からメールが入っていた。
『よお、元気?仕事頼みたいんだけど、飯でもどお?』
なんだ?何年も連絡してないのに調子のいいヤツめ。ただ、仕事は欲しいので、何の仕事かは気になる。
『何の仕事?』
『メールでは説明しにくいから、今夜焼き鳥屋にでも来いよ』
相変わらずの上から目線。
ちょっと待て、深田。別れた男に安く見られてはならない。
『別れた男と焼き鳥行く女無いでしょ』
断った。
『ミクニでどう?』
彼は深田のお気に入りのレストランを提案した。
『飽きました』
これは断り文句のつもりだった。
『お前、イヤなヤツだね~。それでは、ミシュラン二つ星フレンチ取りました。7時でお願いします』
その店は前から行きたいと思っていた予約の取れない有名店だ。
『分かった。じゃあ、現地で』
仕方ない。偵察に行くしかない。
電話を切った後、深田は古びた下着に着替えた。
恋愛作家森瑶子の格言に『別れた男とヨリを戻したくない時は一番汚い下着を着ること』とあったからだ。その本は小学生の時に読んだ。
タクシーに乗り、『別れた男の前ではイヤな女を演じるのだ』と深田はブツブツ唱えた。
「で、なに?仕事の話って?」
本日のアミューズ、フォアグラペーストのシュー仕立てを頬張りながら、深田は質問した。
「俺の会社、上場させる事にしたんだよね」
「あんたみたいなアナログの会社、人件費ばっかり嵩んでレバレッジ聞かないから、バリュエーション(高い株価)付かないから無駄よ」
深田は栗のポタージュを啜りながら答える。
株価の評価は、自分の本業だ。
「その通りなんだよ。だからさ、お前の会社を買収したいんだ。人からお前の副社長が失踪して、お前が困ってるって聞いたし、資本が入ればお互いウィンウィンだろ?」
彼はワイングラスを掲げてウインクした。
確かに深田の会社は最先端技術開発会社なので、小規模でもバリュエーションは異常に高い。
「会社、解散しちゃったんだよね」
深田はわざと新会社を立ち上げた話は避けた。
上場前の会社は子会社の買収をしたら上場時期が遅れるというマイナーなルールがある。彼の話、何か裏がありそうだ。
「ええ!!!マジで!!?もったいない~~」
彼はガクーとなった。
「うん、ちょっと前よ。ざーんねん」
深田は好物のトリュフがかかった鴨肉にポテトペーストをかき集めて頬張る。流石に最高の味わいだ。
「じゃあ、俺が子会社作るから、お前が社長になれよ」
「イヤよ」
「なんで、イヤなんだよ」
「朝五時に起きて七時には会社に来る親会社の社長がいる会社でこき使われたくないもん」
深田は同僚からワーカホリックと呼ばれて敬遠されていた。よりワーカホリックなマイケルも異常に勤勉勤労だが、こいつも異常に仕事が好きだ。そんなのに付き合わされたら身体が持たない。
「お前って、本当に性格悪いよね~」
「不誠実な男にはね」
「俺はね、誠実さには欠けるけど、すごくいいオトコなんだよ」
「その実力はよく知ってる」
深田はデザートを食べ終えて、ハーブティーを飲んだ。彼狙いの女に掴み掛かられたり、イチャモン付けらたり、本当に散々だった。
「よし、じゃあこうしよう。お前の給料月100万円、勤務時間はお前に任せるがホールディングスの役員会議には必ず出席してくれ!」
「考えるよ」
本当は考える気も無かった。
人の下で働くのはしょうに合わない。
「絶対考えろよ」
彼はそう言うと気分が良くなったのか、キッチンに向かって歩き始めシェフとお喋りを始めた。自分もフレンチレストランを始めるから俺のところに来いよと英語で話している。
その時、白いクロスがかかったテーブルの上に置かれた彼のスマホが振動した。『電話鳴ってるよ』と知らせようと思うと、彼の携帯にエリの友達の名前が表示された。
「なるほど、そういう事か」
自分では直接手出しできないから、野心家の元彼にアプローチしたんだな。彼なら金で動くタイプだ。さすがエリちゃん、天晴れな策略家だが、そういう事をやると女性には確実に嫌われるぞ。
というか、乗る方も乗る方だ。
「さ、行くか」
深田の肩に、彼がポンと乗せた手を深田は振り払った。
「ご馳走さま!じゃあね」
そう言って深田はタクシーに飛び乗った。
私の心を傷付けるのは構わないが、私の会社に傷を付けるのは許さない。会社は株主の物だからだ。
次の日、深田はダイヤを持ってブランド買取店に行った。
「これ、すごいですね。本当に良いんですか?」
鑑定士がルーペでダイヤを値踏みしなかまら深田に聞いた。
「いいのよ。真実の愛はプライスレスだから」
愛は形がない。
愛は無から産まれて無に帰る。
何も残らなくて正解。
黒いスーツの男はチラリと深田を見て、深田は思わずまつ毛を伏せた。
残念なだけ。
マイケルが言ってた。
数々のハニートラップを仕掛けられても婚約者だけを大事にした果てに、中国スパイに協力した青幇に婚約者をナイフで傷付けられた。
「俺は誰とも関係を持ちたくない」
マイケルの孤独。
それって、このことか。
TO BE CONTINUED

台湾秘密結社青幇と中国人民解放軍:名義間違い差押詐欺事件について

今日は、ある方とご相談してきました。

その方曰く、某銀行の暴挙は果てしないとのことでした。

ここからは伝文の限りですが、在日外国人の方が通名を利用できることをいいことに富裕層と同じ名前を登録して、その名前で富裕層の方が口座を持つ銀行に口座を開くそうです。

そして、その後、ヤクザと契約書を交わして、ヤクザから訴訟されて銀行に裁判所から差し押さえ命令が来るのですが、当の本人では無くわざと富裕層の口座を差し押さえてお金を横領するそうです。

ヤクザと弁護士と銀行がグルになって。

被害に遭った富裕層は、銀行を訴えるのですが「裁判所命令ですから」となしのつぶて。

弁護士も「裁判所命令だし」と知らん顔。

裁判所に「人違いで差し押さえられました」と訴えても、今度は裁判所は「私たちは命令を訴え通りに出しただけで、貴方のお金がどうなったかは関係ありません」と答えるそうです。

これって、私がいま、被害に遭っているのとまったく同じ構図なんですけど・・・

この偽装裁判詐欺は台湾ではかなりポピュラーな手口だそうです。

2015年12月30日水曜日

イベント:【裁判告知】東京地裁823号法廷 1月8日午前11時30分です。

【裁判告知】
来年の1月8日午前11時30分より、東京地方裁判所823号法廷で、原告深田、被告国として、東京地方裁判所の裁判官鈴木清志が梶原利之弁護士と共謀して判決文を偽造した件についての訴訟第二回期日が開かれます。

被告国の回答は、知らぬ存ぜぬ作戦です。

知らないんだったら、何故、外国人男性宛の判決文で三菱東京UFJ銀行に私の口座から無断で資金を引き出すことを許したのか、その経緯を明らかにするべきです。

また、棚橋知子裁判官は失踪した私の会社の元副社長小林英里(現岩沢英里)の友人でした。そして、当時の代理人森川紀代弁護士も小林英里の紹介でした。

私は仕組まれた偽装裁判に巻き込まれたようです。

それら、福島瑞穂が率いる国際犯罪集団に付け入る隙を与えた被告国に東京地方裁判所内の犯罪集団を一掃することを求めます。

第二回期日は、証人尋問と違って退屈でしょうが良かったら傍聴に来てください。

私はカンニング竹山さんの番組で、株で損する人はいますかと聞かれて、「勝負は負ける奴が悪い」と答えました。この言葉は自分に向けた言葉です。私の会社は金を横領され、開発中の技術を横領され、開発中の製品を破壊され、印鑑まで小林英里に持ち逃げされました。

負けた私が悪いんです。

ただし、二回戦は負けたけれども、三回戦で戦わないとは言っていない。

自分の息の根が止まるまで戦い続けます。

以上

2015年12月29日火曜日

事件サマリー:三菱東京UFJ銀行新宿中央支店長による預金横領事件

ヤフーニュースで書いたコラムが三菱東京UFJ銀行からの圧力で消されました。
記事のコピーをここに残します。

===
主要銀行にシャープは嵌められた!!

市場最大のインサイダー取引

昨日、台北にいる金融業界の台湾人から連絡があった。

台湾銀行薫事長の李紀珠氏が三菱東京UFJ銀行頭取平野信行氏と特別融資に関する覚書を結んだのは、鴻海が身銭を切らずしてシャープ買収を行なう為の布石だという話だ。

信用枠のスワップと言うのは、台湾国内では国民党のバックアップを得ている鴻海はいくらでも借り入れができるが、日本では融資を得られない。2年前のシャープ買収を声高に叫んだテリーゴウ氏は、裏側で悉く日本の銀行に融資を断られた為に、シャープ買収を断念した経緯があった。それを救うのがこの三菱東京UFJ銀行と台湾銀行の覚え書きだが、鴻海はそんなに金が無いのか。

ウォールストリートジャーナルを見ると、鴻海のようなキャッシュ垂れ流し企業にシャープを買う資金力は無いと報じられている。欧米メディアは冷ややかに見ている鴻海のシャープに日本人が翻弄されてはならない。

また、昨年11月に鴻海の主力顧客であるアップルのiPhone6sの生産量が予想よりも10%削減されたと報じられている。これは、薄利多売の鴻海のビジネスモデルに大打撃を与えたはずで、資金はとてもではないがシャープには回るはずもない。

それを可能にしたのが、シャープの主要銀行と台湾銀行薫事長李紀珠の取引だ。

台湾銀行薫事長李紀珠と言えば国民党所属の元台湾立法院委員で、鴻海社長テリーゴウ氏の友達だ。反日馬英九台湾総統のお気に入りの反日仲間だ。

さすがにシャープ主要銀行の一行だけが台湾銀行薫事長李紀珠と覚書を結んでいたら、単なる偶然だと言えるかもしれない。ところが、李紀珠は昨年10月にみずほ銀行頭取林信秀とも協調融資の覚書にサインをしているのだ。

さて、三菱東京UFJ銀行平野頭取のシャープに対するコメントは、「シャープは私が退任するまでに決着を付ける」だ。決着を付けるというのはどういうことか。その某台湾人によると、みずほと組んだ5100億円のシンジケートローン返済延期を断って、シャープを窮地に追いやり、鴻海に信用供与してシャープを買収させてあげるという決着だ。

可能性の一つとしては、返せるわけもない5100億円ローンの期日返済を迫り、シャープを民事再生法申請まで追いこむことだ。そうすれば、民事再生法の下でシャープは再生のスポンサーを付けなければならない。その時に、鴻海が手を上げて三菱とみずほから融資を受けて、DIP型再生に臨めば今までの株式を全て原資して既存株主を抹殺し、主要二行は5100億円の債権を放棄し、鴻海は身銭を切らずして借金の無くなったシャープの100%株主になれるというシナリオだ。

そう、時価総額2000億円のシャープをゼロ円で手に入れ、5000億円の借金棒引きにしただけで、鴻海は合計7000億円儲かってしまいます。これって、立派なインサイダー取引ですよね。

なにか、聞いたことありませんか?このストーリー。
はい、エルピーダと同じです。
エルピーダの偽装倒産劇も、馬総統率いる台湾秘密結社青幇が行ったのです。

実はシャープを救うのは簡単で、三菱東京UFJ銀行とみずほ銀行が「融資の返済を待つ」と一言いえばそれで済むのです。それは、日本政府もこの二行に要請していることですが、それを断ってでもこの二行はシャープを鴻海にプレゼントしたいんです。

私たち個人投資家がシャープを救えるとすれば、証券取引等監視委員会に電話をして、この馬鹿げたディールを辞めさせることでしょう。

台湾企業の為に債権を放棄するなら、三菱東京UFJ銀行とみずほは、本日、日本と言う国の為にシャープの債権を放棄すればいいのです。

日本の証券取引等監視委員会は何をやっているかというと、『木を見て森を見ず』体質で個人投資家の小銭ばかり追いかけているので、この史上最大のインサイダー取引を取締りもせずに放置しているという次第なのだ。






===
同行が横領した私の金の損害賠償請求に勝訴

平成27年11月27日、三菱東京UFJ銀行に対して私が起こした損害賠償請求事件で、深田萌絵は弁護士無しの丸腰で超高給弁護士に勝訴した。

判決は、私の銀行口座から引き出した金を全額支払いなさいという、至極当然の判決文だった。高給弁護士と素手で戦って勝てた理由は、私が賢いからではなく、私三菱東京UFJ銀行から受けた被害があまりにも理不尽だからだ。

ところが、訴訟経済上考えられないことだが、三菱東京UFJ銀行は高裁へ控訴した。
理由は、深田萌絵の訴訟に敗訴したとなると、横領が確定する為だ。

横領が確定すると、支店長をクビにするだけではなく、銀行も金融庁から処分を食らうので泡を食って、裁判所に「深田萌絵の金を全額返せ」と言われたのに「嫌だ」と答えたのだ。

高裁での裁判に負けて、横領が確定すると金融庁からの処分を受ける可能性が高いので、私の裁判の高裁判決が出たあたりで「売り」だ。

事件の経緯

平成25年11月1日、三菱東京UFJ銀行新宿中央支店長により、同行に預けた私の銀行口座から無断で資金が全額引き出された。その日、私は口座に840万円ほど振り込まれる予定だった。

銀行にあるはずの金が無いので私は慌て、社員に銀行に問い合わせさせたところ「深田萌絵の口座は差し押さえられました。裁判所命令は一週間後に裁判所から届く」との回答だった。

ところが、待てど暮らせど裁判所の判決文は来ない。
弁護士を雇ったがあまり役に立たずに異議申立も却下された。

そのうち、忙殺されて、判決文のことも忘れていた。
今年の春ごろから、役に立たない弁護士をクビにして全ての訴訟を自分で行なうことにした。リサーチハウスに勤めていたので、自分で調査すれば十分勝てると踏んだからだ。

記録のコピーを徹底的に調べた。
まず、この仮差押え事件、私に判決文が届いていない理由が分かった。
なんと、仮差押えは外国人男性の銀行口座が対象となっていたのだ。
じゃあ、どうして私の銀行口座から金を抜いたのか。
新宿中央支店長田中靖士の陳述書を調べると「当事者目録上の債務者の表示と投稿宛て届出の預金者表示に不一致な点があり、両者の同一性が確認できれば支払う」と陳述されていたのだ。

銀行ぐるみの犯罪の可能性

同行の犯罪1.
口座名義の同一性が確認できなければ、「該当者なし」と回答しなければならないのだが、「同一性が確認できない」としながら私の銀行口座から無断で資金を引き出すという暴挙に出たのだ。夫の銀行口座の金を妻が引き出したいと言って引き出せるだろうか。無理だ。疑うなら、手ぶらで銀行に行って「妻の銀行口座のお金をください」と言ってみましょう。断られます。妻が夫の銀行口座からお金無断で引き出しても「不正引き出し」として詐欺が成立してしまう。

同行の犯罪2.
仮差押えは資金を引き出してはならない。資金を引き出すのは、裁判所からの強制執行命令が必要である。彼らが名義違いの銀行口座から資金を引き出す法的根拠が全くない。よって、これは横領だった。

同行の犯罪3.
無断で引き出した資金の勘定科目が虚偽である。
銀行は各支店毎日一円単位で集計が合うまで計算し続けなければならない。私の資金を引き出したら、絶対に計算が合わないのだ。額は小さいが勘定科目の虚偽表示を行なって、監査法人を騙した。所謂詐欺だ。そして、監査法人の監督不行き届きにより、当行は名義が一致しなくても無断で支店長クラスの行員が預金者の口座の金を好き放題できるという銀行としての継続性の嫌疑に係る事実を見逃したということになる。


人違いだと分かった時点で、三菱東京UFJ銀行に対して預金の返還を求めたが、新宿中央支店の夷子氏にそれを断られた。私にすれば、泥棒にお金を返してと頼んで断られたようなものだ。

三菱東京UFJ銀行、更なる不正疑惑

さて、外国人名義宛仮差押判決による深田口座横領事件の実行犯である田中靖士だが、彼が新宿中央支店にやってきた経緯も不明なのだ。

彼は前日まで支店長では無かった。
私の口座から横領をしたその日に新宿中央支店に支店長として赴任したのだ。
リテール副部長から支店長へのご栄転のその日に犯罪をしたがるエリートがいるだろうか。
部長でもない彼が副支店長をすっとばして支店長?御冗談。

彼の横領事件の発端は、恐らく、訴訟になった場合、蜥蜴の尻尾切りで彼だけが罪に問われて終わるという取引の下でいきなり片田舎から都会のど真ん中への昇進を行なった可能性がある。
そうでなければ、銀行は副部長からいきなり支店長になるはずがないのだ。
彼が私の金を横領するというしょうもない罪の裏には、ある政治家が関わった米軍軍事技術横流しの裏取引があった。本筋から外れるので割愛する。

「半沢直樹」を見ましたか?
ドロドロの銀行内部闘争。
ハンパな罪を犯すだけでは出世できないのが銀行なのです。
私の元主人も銀行員でしたが、上司から不正をするように強要されて断ったら地下金庫の金庫番にさせられたという実績がある。

私も金融機関勤め時代に、上司から危険な金融商品を顧客に押し付けるように迫られましたが、断ったので年末実家に帰らせてもらえないという嫌がらせをされました。

まともなことをやれば、出世はおろか生き残れないのが金融機関です。
金融機関で出世するというのは、それくらい大変なことなのです。

金融機関は不正を徹底的に隠ぺいする。
私も以前は金融機関勤めをしていたが、金融庁の検査時には部長が徹底的に書類の偽造と不正の証拠の隠ぺいを行なっていた。(彼らは、ちょっと危ない橋を渡っていた。私は悪い事をしてなかったのでその必要は無かった)

これは、銀行勘定科目の虚偽表示に該当するので、処罰の対象は実行犯の田中靖士支店長のみに収まらず、監査法人にまで及ぶことは間違いない。

銀行の価値とは何か

私はこのコラムを書く理由がある。
私のようにメディアに出ている人間ですらこの仕打ちなので、声も上げられずに抹殺された被害者はもっといるのでは無いだろうかと考えている。

銀行に預けた金を返してほしい。
それのなにがいけないのか。

銀行の不正を許すかどうか。
それは、あなた次第だ。

気になる株価ですが、株の価値は企業の価値から派生したものです。
銀行の価値は、信用です。
信用して自分のお金を預けられるのは、「同一性」が確認できないかぎり自分の銀行口座は安全だという前提です。
預金銀行としての前提条件が崩れているので、銀行としての価値がありません。
名義不一致で無断引き出しという事実は隠ぺいできないので、金融庁からの処分等にも近い将来遭い、株価はそれを織り込むでしょう。

高裁の判決スケジュールについては、ブログでどうぞ。

2015年12月25日金曜日

三十路ビューティー道:第31回戦 キーパーソン


「クレイジーだな」
深田の新会社を立ち上げようという提案をマイケルはSkype越しに笑った。全部持ち逃げされて、何も残ってないのに、また会社やろうなんて、確かにちょっとバカげてる。

「資金はどれだけあるんだ?」

「会社の登記して、一ヶ月分の資金繰りと私の一ヶ月分の生活費よ」

一ヶ月しかもたないのに会社始めるなんて本当にどうかしている。どこまでお前は博打打ちなんだと、自分でも言いたくもなる。

実家へ帰ることも考えたけど、今、諦めたらきっと後悔する。諦めるなら、コテンパンにやられて二度と立ち上がれなくなるまでやられてからだ。ま、けっこうやられたけど。

「一ヶ月か。日本のチャイナリスクが高過ぎるから俺は出資できない。それでもやるのか」

「出資はいらない。すぐに営業に出るから、技術だけ出して」

金は無くても技術があれば、営業で取ってこれる。

「慌てるな、2日待て。そして、株主に相談して全員の了承を得ておくんだ」

そう言って、マイケルはSkypeを切った。

2日後、マイケルは新しい開発中の基板を持って日本ヘ帰ってきた。マイケルのアパートの共有スペースで、マイケルは基板を広げた。もう、我々にはオフィスすら無いのだ。

「なにそれ?」

「音速機の遠隔運転で使おうと思ってた、高速動画伝送システムだ。コンシューマ規格に直した」

「今どき動画配信なんて誰でもやってるし、YouTubeでもできるよ」

「そうじゃない。動画配信サーバーを経由せずに高速で動画を伝送するシステムはまだコンシューマの世界には無い」

ネットでマイケルの開発した動画伝送システムのスペックとコンシューマのスペックを比べた。

有線伝送でも世界最速を謳う米国製品より15倍速い。

無線動画伝送システムで比較すれば100倍速いのだ。

「どの分野に営業かけるべき?」

「医療、防災、遠隔操作系だ」

「じゃあ、今すぐ営業行ってくる」

「ちょっと待て、脳タリンのフカダ。設定にあと数週間かかるぞ」
とマイケルが言い終わる頃には、もう深田は営業に出ていた。

「え、世界最速動画伝送システム?発注します。デモ見せてね」

医療系システムを開発してる会社の社長がそう答えた。

「ごめんなさい!設定が終わってないから、デモまで数週間かかります」

「いいよ、先に発注します」

技術が好きな社長なので、新しい技術は早く買って研究したいようだった。やったー!と、深田は思ったが冷静に考えると仕入れの代金が無い。

「前金お願いします!」

「え、前金?」

一瞬社長は戸惑ったが、「仕方ないなぁ」と同意してくれた。

「よおし、これで一ヶ月延命!」

全財産失って、最後にブランド物売ったお金で立ち上げた会社の寿命が一ヶ月延びた。

このことを株主に報告しなくては。
前の会社解散させちゃって、新しい会社始めるなんて言ったら絞られるかもしれない。

「こちらへどうぞ」

社長室へ通されると、イタリア製のスーツにポケットチーフを入れた品の良い男性が革張りのチェアに座っていた。

深田は恐る恐る経緯を報告した。

「あーはっはっは、さすが深田さんですね。面白い!」
株主はお腹を抱えて笑ってた。

深田はキョトンとする。

「いや、大親友のエリさんに裏切られて意気消沈してるなら、励ましてあげようと思ったけど、やっぱり深田さんなんですね」

「いや、泣いちゃいましたけど、それで終われないです」
そうこなくっちゃ、と彼は笑った。

「最近ちょっとヨーロッパの宮殿でパーティを開いたので僕もちょっと余裕無いけど、資金出しますよ」

「あの、ありがとうございます!!」
深田は会社を出てから、思わず顔が綻んだ。

会社を解散させたのに、怒られるどころか更に応援してもらってしまった。エンジェル投資家達の対応は、天使どころか神の領域に達した。

辛い事があった。

泣いた。

もうダメだと思った。

でも、まだ応援してくれる人がいる。

神様ありがとう。

深田は傲慢でイヤな女でした。

自分の甘さや傲慢さを反省しながら地下鉄に乗ってマイケルの下へ向かった。

「マイケル、資金繰りの目処がついた。これで半年はいける」

深田はアパートの共有スペースに戻った。マイケルは共有スペースを自分のオフィスかのように堂々と使っている。

「GOOD。でもな、フカダ」

マイケルはパソコンを指差した。

「なに?」

マイケルのメールボックスに中国上場企業の役員からメールが来ていた。ファーウェイのコンペティターだ。

「こう書いてある。『御社のキーパーソンを引き抜いたとファーウェイ幹部が自慢しに来たぞ。どうなってるんだ?』ってな」
深田は眼を見張った。

確かに、そう書いてある。

キーパーソンも何も、こんな数人しかいない会社、そんな居なくなったのは一人しかいない。

彼女は脅迫されていたわけじゃ無かった。

彼女は喜んで産業スパイとなったのた。

しかも盗んだのは、輸出規制の民軍両用技術か。

TO BE CONTINUED

事件サマリー:第29回戦 内閣情報調査室


「深田社長、これ、御社の社印じゃないですよ」
信用金庫の営業が深田に印鑑を突き返した。

「ええ?」
エリの親友が「エリに頼まれました」と言って持って来たうちの社印のはずだった。
「そんなはずは・・・」
「社印の陰影が違うでしょ」
言われてみると確かに陰影が違う。

エリに電話をしても繋がらない。LINEもFacebookも無いので連絡しようも無い。
エリの母親を名乗る女性に電話すると、
「それは貴女の気のせいです」
と言っただけで電話は切られた。

「しょうがない・・・」
深田はエリを数年前に紹介してきた会社の社長に電話をした。

トゥルルル、トゥルルル、

コールは鳴るが繋がらない。

共通の知人にメールで『エリを紹介してくれた社長と最近連絡取ってる?」と聞くと、『萌絵ちゃん、知らないの?彼、失踪したってニュースで出てたわよ』とURLが送られてきた。

クリックすると、確かにエリを紹介した社長が失踪したというニュースが出ていた。
「そんなバカな・・・」
失踪したのがエリだけじゃなくて、紹介してきた人間まで失踪しているなんて、そんなことあり得るだろうか。

胸騒ぎがして、ネット上で『小林英里』と検索してみた。エリは学生起業家として有名だったので、色んなサイトで紹介されてきた。

「ない、ない・・・」

エリの情報が全て綺麗にネット上から消えていた。あんなにたくさんあったエリの写真も消えて、彼女と全く関係の無い写真しか検索で上がらなくなってきた。

スパイシーにエリの昔の会社『有限会社壱歩社長、小林英里』が掲載されているが、それすら全くの別人の写真だ。


「なんでそんなことができる?」
このネット社会で、ネット上から自分の写真を消したいと思っても消せないのに、全てが消えるなんてあり得るんだろうか。

「マイケル!」

深田はマイケルを振り返った。

「エリの写真が全てネット上から消えた」

「ほう、なるほどな。そういうことか」

「どういうことよ」

「内閣情報調査室だ」

「内調って、日本のCIAみたいなとこでしょ?」

「そうだ。ネット上から全ての情報を消すなんて、日本では内調しかできない」

「なに?それってどういうこと?」

「内調の中にダブルスパイがいて、エリを匿っているってことさ。一般人にネット上の全ての自分の情報を消すことは出来ない」

そうだ。マイケルがFBIに保護された時、ネット上のマイケルの写真も情報もほぼ全てが消された。そんなことは国家にしかできない。

「内調って、政府の情報調査局が私たちの敵になったってこと!?」

言われてみれば、内調とつながっている人たち数人から「R社のことを内調は把握してますよ」と言われた。でも、全員が「内調は深田とは会いません」と断ってきた。

「福島瑞穂と内調が繋がってるんだろう」
確かに福島瑞穂は内調に何度となく情報提供するように指示している。

「内調のなかにダブルスパイがいるってこと?」

「もちろん。日本の情報は韓国中国に駄々漏れだからな。そのうち、内調内部の人間は消されるだろう」

なんで?と聞こうとした瞬間に株主たちがぞろぞろとオフィスに入ってきた。そうだ、今日は株主総会だ。

「それではこれより、R社の臨時株主総会を開きます」

株主たちを前に深田は総会を開始した。

「株主の皆様、本日はお忙しいなか急な召集にも関わらずありがとうございまし・・・」

深田は謝辞を述べた。

「議長」

マイケルが深田の言葉を冴えぎる。

「R社は、本日をもって全ての営業活動を停止し、解散することをここに求める」

その場の空気が凍りついた。

解散なんて、聞いてない。

説明しろと求める株主、深田はマイケルの顔をみつめる。

「開発は破壊され、全てが盗まれた。ゲームオーバーだ」

マイケルは冷酷に答えた。


TO BE CONTINUED

2015年12月19日土曜日

事件サマリー:第28回戦 嗚咽


エリと連絡が付かなくなって何日もが無為に過ぎた。
食事をしようとすると嗚咽で呑み込めず、ダイエットでは落ちない体重があっという間に3キロ落ちた。

「エリちゃんが裏切る?」

裏切ったかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
彼女の意思かもしれないし、そうじゃなかもしれない。
自分が頼りない人間だから、愛想尽かされただけかもしれない。
それは、自分には分からないことだ。

でも、この一年間これだけ脅迫されたり、なんだかんだあったんだから、もしかしたらエリも脅迫されて拉致されたのかもしれない。
そんな考えが浮かんでマイケルに電話をすると、

「脳みそ足りないな。裏切られただけだ」

「毎日エリとご飯食べてたのよ」

「それがどうした。金を積まれたら、お前とするより豪華な食事が一笑できる」

「信頼関係は?」

「金より安いってことだ」

そう言われて、深田はカッとなって電話を切った。

「なんで、マイケルは人の気持ちわからないの」
深田はスマホの電話帳を端から端までチェックした。こう見えても顔は広い。相談に乗ってくれる人が一人くらいはいるかもしれない。そこに、一人のジャーナリストの名前が見えた。

彼は内閣に情報を提供しているジャーナリストなので、もしかしたら政府に繋がっているかもしれない。

「もしもし?」

「あれ、深田さん」

深田はエリが失踪した件で、どこかに相談できないかを尋ねてみた。

「内閣情報調査室ですね」
彼は応えた。

「なんですか、それ」

「日本に諜報機関はありませんが、いわゆる、CIAのカウンターパーティー的な位置づけです。そこに聞いてあげますよ」

「会えますか?」

彼はさぁ、と言った様子で一度電話を切った。数分後にコールバックがあった。
「深田さん、内調はR社の件を把握しています」

「ええ?うちみたいなベンチャーのこと何で知ってるの?」

「雑誌『外交』と産経新聞でしょ。派手でしたからね」

「じゃあ、会えるんですか?」

「内調は、貴女には会わないと回答しました」

「そりゃそうですよね・・・」

深田はただの民間人だ。政府関係の人間が会うわけもない。

オフィスチェアに座り、大きくのけ反って天井を見た。

「議員に相談すればいいのかも」
そうだ、拉致関係に強い保守系の国会議員に相談すべきだ。
居ても立っても居られなくなって、知り合いの社長に拉致に強い議員を紹介してもらった。

議員秘書が会ってくれて、すぐに警察関係や政府系の調査機関に問い合わせるので少し時間が欲しいという回答があった。

数日ほど連絡なしに過ぎ、ある土曜日の朝、Facebookを見るとエリのアカウントが消えていた。エリのブログも、SNSも彼女への手掛かりがどんどん消えてきている。

深田はすぐに議員秘書に電話をした。
早くしないと、手掛かりが消える。

土曜日、日曜日と電話をしても繋がらず、月曜日に秘書から折り返しがあった。

「土日に電話してくるなんて、お前は常識が無いのか!そんな緊急の事態があるのか!」

第一声は怒鳴り声だった。

「あ、すみません。エリの手掛かりがなくなってきているので・・・」

「知るか!警察でも行け!」

そう言って、電話は切れた。

深田はツーツーとなるスマホを見つめた。

「これが拉致問題の議員秘書だなんて・・・」

確かに拉致されたとは限らない。
エリは私を嫌って連絡してこないだけかもしれないし、本当に失踪したのかもしれない。自称エリの母親が本物かどうかも分からない。

無力感で、スーッと涙が流れた。


TO BE CONTINUED

2015年12月16日水曜日

事件サマリー:第27回戦 何もかも消えて



「深田社長!ここにハンコ!お願いします」
取引銀行から頼まれて、深田は金庫を開けた。

「あれ?」
入っているはずの印鑑と通帳が無い。そうだ、エリが契約書作るとかで印鑑通帳を持って帰ってしまっているのだ。

「すみません、副社長に預けてて風邪で休んでるんですよ」
「そうですか、それじゃあ次回」
そう言って銀行員は帰って行った。

エリが休んで3日。

電話は通じず、LINEで朝一通メッセージが来るだけだ。深田はLINEで「病気は分かりますが、印鑑と通帳をエリの家に取りに行ってもいいですか?仕事になりません」と連絡すると、「ご迷惑かけてすみません。親友に持って行かせます」と返信が来た。

「おい、友達に持って行かせるってなんだよ。同好会じゃないんだぞ…」
深田は苛立ちを覚えたが、自分の感情より実務を遂行する方が大事だと思って了承した。

しばらくして、エリの親友が会社のパソコンと印鑑通帳を持って来た。

「深田さん、すみません。受領書頂いていいですか?」
と言われて違和感を覚えた。
エリはこれまで取引先とのやり取りで受領書を作ったことが無い。それで散々揉めてきたのだ。そんな人間が会社の備品返すのにここで受領書を要求するのかと思うと、正直気分は良くなかったが、実務優先なのでとりあえずサインをした。

「なんか、おかしな話だよな…」
深田が首を傾げてると、電話がかかってきた。エリの携帯だ。
「エリちゃん!どうなってるの?」
「エリの母です」
「え、お母さん?」
深田は目が点になった。
「エリが深田さんに書類を渡したいので至急お会いしたいのですけど、いつ頃ご都合宜しいですか?」
「え?書類?今日は一日中オフィスにいますけど…」
「それではこれから伺います」
と言って電話は切れた。
いったい何の書類だよと思いながら深田は椅子にもたれかかった。

5時頃、エリの母親がやってきた。
「エリの辞表です」
「え、辞表?」
「エリは鬱病で衰弱しきっていて、歩くこともできません。お医者様にもそう言われてます。受け取って受領印を押してください」
「今日は無理ですよ」
「じゃあ、辞めたという証明書を発行してください!!」
会社辞めた証明書ってなんだ?と深田は首を傾げた。
「お母さん、ちょっと待ってください。私だけで決められません。株主もいるんですから」
「じゃあ、今すぐ株主全員に電話してください」
さすかに面食らった。
会社の副社長やってる人間がお母さんに辞表持って来させて、株主全員に電話しろというのである。
「お母さん、できるだけ早めに株主に連絡しますから、今日はお引き取り願えませんか?」
「分かりました。早めに連絡ください」
そう言って、母親が帰ろうとした時にそうだと思った。
「お母さん、エリちゃんの病気、長引きそうでしたら、良かったら彼女の私物を持って帰ってあげたらどうですか?」
そう言って、深田はエリのデスクを開けた。
すると、あるはずの化粧ポーチやハンドクリームが無い。
ロッカーを開けても空っぽだ。
「おかしいな、何にも無いみたいですね」
「そうですか、それでは失礼します」
そう言って、母親は帰っていった。

帰宅後、ワインを飲みながら、深田は思いふけった。
「なんで私物ないんだ?」
ハッとした。

飲みかけのグラスを置いて部屋から駆け出し、夜道でタクシーを見つけて飛び乗った。

ガチャガチャとオフィスのドアを開けて、開発中のシステムのケースのネジを外した。
「ない…」
硬く閉められたケースのネジを外して、二つ目、三つ目と開けていく。
ハードウェアケースの中身にあるはずの開発中チップとハードディスクドライブまでも残っていなかった。
わざわざネジで締めてるケースから取り出していくなんて…

何千万と開発費をかけたものがアッサリと副社長に持ち逃げされた。盗んだ本人が消えたとなれば、株主から訴えられるのは自分だ。

その場に座り込んで、深田は電話を掛けた。
「マイケル…開発中のチップが盗まれた」

「警察に届けろ」

「警察…」
深田は戸惑った。少し前まで毎日一緒居た親友を警察に届けるのかと。
「そして、緊急株主総会を召集しろ!お前の処分をその時に決める」
そう言って電話は切れた。

重い足取りで深田は中央警察に赴き被害届けを出した。これまでのように、被害届けの受理を断られたらとも思ったが、今回はあっさりと被害届けが受理された。

一年間、何度被害届けを出そうとしても警察には断られ続けた。巧妙な犯罪者達は殆ど証拠を残さなかったからだ。

「エリちゃん…」
もし、この事件が表沙汰になれば、青幇、中共国安がスケープゴートに使うのは証拠を残した彼女だ。

涙が止まらなかった。
ベッドに横たわって、ただ天井を見ていた。

神様、人間は、なんて残酷なゲームをするんですか。

事件サマリー:第26回戦 新聞一面に



ジリリリ、ジリリリ

黒電話音に設定したスマホが鳴る。

「うーん・・・」

目がなかなか開かない。たぶん、昨日なかなか寝付けなかったせいだ。
うっすらと目を開けてスマホを見ると、『エリ』と表示されていた。

良かった。これで仲直りだ。

「エリちゃん、おはよう」

「もえちゃん、大変です!」

電話口でエリが声を上げる。

「だから、何が大変なんだよ!」

ほぼ、毎日のようにエリかマイケルが大変大変と言い出すので、そろそろ苛ついてくる。

「FPGAが盗まれそうになった事件、産経の一面になりました!!」

「ハァ!?産経新聞!?」

「はい!一面です!」

「ていうか、エリちゃん新聞読んでたの?」

思わず深田は突っ込んだ。

「いえ、知人から連絡があって、産経新聞一面のR社ってうちのことじゃ
ないかって聞かれて見てみたんです」

「どうだったの?」

「うちです。間違いなく・・・」

その言葉を聞いて、深田は髪も梳かさずコンビニへと走った。

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新聞には、盗まれそうになったFPGA7000万円相当を中国に渡る前に水際で回収したと書かれていた。R社のK氏。マイケルのことだ。

『狙われた情報通信』と冠された記事には、『上』と書かれていた。明日は『下』となるのか。

翌朝はより衝撃的な記事だった。

うちの3D技術で中国人民解放軍と直結している中国科学院が衛星搭載型のレーザー兵器の開発を行なおうとしていることが明らかになった。

「解放軍のルアンハオ・・・」

聞いたことのある名前、そう、私とエリが訳した英語の意味が分からないと問い合わせてきた人物だ。ただし、問い合わせてきたときは中国科学院だと名乗っていたはずだ。
10年前、マイケルがJSF(統合打撃戦闘機)の開発計画に加わってから、解放軍によってJSFの設計は盗まれた。

当時、マイケルは中国科学院の顧問として、年に数回中国へと渡っていた。無論、米国政府の許可は得ていた。

JSF事件が発覚した後、米国政府の調査で中国科学院でマイケルが出会った40人の院士は全部二つ星以上の解放軍軍人だったことが発覚した。
そして、今、また中国科学院が裏で動き始めている。

「もえちゃん、こんなのニュースになっちゃっていいんですかね」

「そうだな、どうなんだろう」
また、S社の部長が怒鳴り込みに来るかもしれない。

オフィスの電話は問い合わせの電話が鳴り続けた。

R社とは、うちのことなのかと。
深田はエリを車に乗せて産経新聞へと向かった。
「エリちゃん、待ってて」

産経新聞社へと入り、深田は記者を探した。
この記事のこと、もっと知りたい。

担当記者のうちの一人が現れて、記事の情報源については答えられないと告げられた。

「この事件、どうなるんですか?」

「県警が動き始めた」

記者はそれだけ応えた。

「県警!?」
遂に警察が動いた?
この一年間、苦しみぬいた。何度警察に通っても、被害届は一度たりとて受理されなかったのだ。
それが、記事になった瞬間から警察は動き始めたのだ。

深田は走って車まで戻り、エリに声を掛けた。
「エリちゃん!県警が動き始めたって。この一年間の苦しみからようやく解放される!」

深田は少し興奮気味だった。
この不気味な事件の連続、相談しても気のせいだとバカにされてきたけど、もう気のせいだとは言われない。

「よかったですね」

エリは瞬きもせずに答えた。
言葉とは裏腹に顔はこわばり、声は冷たかった。

「もえちゃん、なんだか風邪で熱があるみたい。今日は早退してもいいで
すか?」

エリが力なく答えた。

「そうだね、エリちゃん働き過ぎだよ。休んだほうがいい」

深田はエリを自宅まで車で送り届けた。

すみません、それじゃ、と言ってエリはマンションへと消えていった。

その後ろ姿が、彼女を見た最後の瞬間になるとは夢にも思わなかった。

2015年12月15日火曜日

事件サマリー:第25回戦 口論



「やれやれ」
マイケルがシリコンバレーに戻り、深田は両手を天井へ伸ばした。普通の仕事は苦にならないが、訳の分からないことが多すぎて最近は肩が凝るのだ。

デスクの上にある電源が抜かれた電子基板を見る。

「電気が通らない基板作ってプリント工業は何がやりたかったんだろうね」

「もえちゃん、でも、私はプリント工業さんに基板に電源入れてってお願いしなかった気がするんです」

誰に話しかけるわけでもなかったが、エリが応えた。

「は?何言ってるの?電気屋でパソコン買って、電源付いてなかったらおかしいでしょ。店員に文句言ったら『パソコン欲しいとは聞いたけど、パソコンに電気通せなんて言って無いでしょ』って言われてるようなもんでしょ」

「でも、全部プリント工業さんの責任にするんですか?」

「エリちゃん、うちはお金払ってるんだよ。基板メーカーにいくら払ってきたと思うの?それなのに納品してきた会社一社も無いんだよ」

エリは基板メーカーとの担当窓口だったので、相手の担当とはかなり仲が良かった。庇いたくなる気持ちは分かるが、損害は大き過ぎる。株主に対する責任があるのだ。

「深田さん、深田さんはメーカーさんにとっては良いお客さんじゃないんです。だから、お金払っても納品して貰えないのは仕方ないんです」

「は?」

一瞬、彼女の言っている言葉の意味が分からなかった。

白いデスクの向こうにいるエリはいつも通りのポーカーフェイスで、黙ってこちらを見ている。

「エリちゃんは取締役で経営側なのに、いつまで経っても製品の一つもできないままでそれをどうやって株主に説明するの?経営陣として説明責任果たせるの?」

エリは応えなかった。

「経営者として恥ずかしくないの?私は恥ずかしいわ!」

垂れ目の大きな瞳が瞬きもせずにこちらを見ている。

「そうですか。深田さんの気持ちが分かって良かったです」

エリはそう言い残して、「今日はもう遅いので」と言ってオフィスを出た。時計は夜の九時。確かに遅い。

「なんだよ。私の気持ちが分かって良かったとか」

そこじゃないだろ、と思いながら夜道をトボトボ歩き、気分転換に一人で近くのワインバーに入った。
「シャンパンください」

「あれ、今日はお一人なんですね」

白シャツに黒ベストのマスターがカウンター越しにシャンパンを指し出した。お気に入りのマッシュルームサラダをつつく。
三年間、仕事帰りにエリと一杯飲むのが日課だった。合言葉は「お腹空いた」だ。

「うん、そうだね」

思わず涙が零れたが、マスターはそっと背中を向けてグラスを拭いた。

2015年12月14日月曜日

事件サマリー:第24回戦 ベンチャーキャピタリスト②



流暢なLAアクセントが利いた英語。
光沢感のあるイタリア製のスーツに程よく焼けた肌が輝いている。それが246のキャピタリスト。どこからどう見てもかっこいいのだ。

「御社への投資には、条件があります」

「なんですか?」

深田だけでなく、マイケルとエリにも緊張が走った。

「深田さんとエリさんを取締役から降ろすこと。もう少し見栄えのする経営陣をハーバードから僕が引っ張ってきますから」

キャピタリストは眼光鋭く応えた。

エリは普段のニコニコ顔がサッと曇った。それはそうだ。資料もたくさん作ってきたし、自分は副社長になったんだと周囲にも伝えて頑張ってきた。キャリアは彼女の誇りなのだ。

逆に、深田は、降りろと言われて、ショックよりも何処と無く肩の荷が下りたような気がした。原発事故や津波被害の為にと思って、この技術を日本で展開しようとしたけど何年もスパイやらインテリヤクザやらから厭がらせをされて正直参っていた。若くしてまぁまぁ稼いだ。それでいい気になって、自分は何でもできると勘違いしてこの会社を始めたのは身の程知らずだったのではと感じていた。

二人はお互い異なる気持ちでマイケルを振り返った。

「取締役?エリは降ろしてもいいよ。深田はダメだ」

その場にいる全員がマイケルの言葉に凍り付いた。キャピタリストも想定外のマイケルの反応に言葉を失った。

深田はチラリとエリを見た。エリが副社長になってから、前に出過ぎないように気を使ってきた。なのに、マイケルは、深田が一番言って欲しくない台詞を言ってしまったのだ。

翌る日、エリは会社に来なかった。
数人しかいない会社は、一人いないだけでガランとする。

「マイケル…なんであんな事言ったの?」
深田は、イヤホンで音楽を聴いていたマイケルを突いて問いただした。

「そう思い付いたからだ」
マイケルはイヤホンを少しズラして、こともなげに応えた。『三年間一度も休んだ事のないエリがいないのに何とも感じないのか?』深田はカッと来る。

「エリは、この会社を愛してるのよ!会社の為にあんなに頑張ってるのよ!どうしてそれが分からないの?マイケルは人間の気持ち、分からないの?」

「会社の為?ハハ、それはどうかな。お前は人間の気持ちも考えも分かっていない」

マイケルはそれだけ応えるとイヤホンをまた付けて、設計の世界に没頭した。

数日後、深田は書類を持って246キャピタルに向かった。

「おはようございます」

見慣れない妙に若い女性が深田を迎えた。

「あれ?」
「あ、すみません。インターンなんです」
「そうなんですか。お若いですね」
「20歳です」
色白の肌に大きな瞳、一瞬タレント事務所に所属してるのかと思うくらいの美人だった。
「どちらの大学ですか?」
「ふふ。しょうもない大学なので言えません」
ん、と深田は思った。インターンなのに大学名を隠すだろうか。
「へー、どこに住んでるの?」
「歩いて40分くらいのとこです」
彼女は愛想よく笑った。
深田は奇妙な感覚を感じながら、ミーティングルームの席に座った。

「深田さん、どうも」
イケメンキャピタリストが現れた。
「投資の条件に、売上の1割をうちに払うという契約書にサインして欲しいんです」
「ええ?」
株式投資にリターンを保証するのは、明らかな金融商品取引法違反だ。
「すみません、金商法…」
「あ、もちろんです。金商法には引っかかりたくないので、契約書は投資契約と顧問契約の二枚に分けます」
それがストリートスマートだと言わんばかりにキャピタリストは笑った。
キャピタリストの隣に例のインターンがチョコンと座っていた。

ふと見ると、彼女が服の上からキャピタリストの股間を触っていた。
「あ、深田さん。この子?いいでしょ。清純で。すごく癒されるんです」
彼女は深田を上目遣いで見つめる。いかにも「深田さんもどう?」と言わんばかりの挑発的な瞳に口元には笑みを浮かべている。

「あ、すみません。今日は忙しいので、こんなもんで」
深田は慌てて荷物を片付けて、トンズラこいた。
『ヤバい。かなり斜め上からの攻撃だ』
あの20歳の美人は、中国からのハニートラップだ。間違いない。
大学名も応えない、歩いて40分くらいのとこに住んでるとかいう謎の女がまともな女の訳が無い。

「マイケル!!キャピタリストのとこに、ハニートラップがいて!股間触ってた!!どうもそれは清純らしい!」
深田はオフィスに戻るなり、英語でそう叫んだ。

「ハニートラップか。俺の行くとこ行くとこに、ハニートラップやらジゴロトラップやら現れて、世の中忙しいな」
マイケルはパソコンモニターを見つめたまま、深田を振り返りもせずに応えた。

深田はエリに電話をした。
「エリちゃん、投資断った。エリちゃんがいないと会社が回らない。良かったら、また来てくれないかな?」
電話の向こうでエリがクスクスと笑う声が聞こえてきた。

「いいですよ」

エリの言葉に深田は飛び上がった。
やっぱり親友だ。
エリちゃんが、親友で、自分には必要なのだ。

ニコニコして電話を切った深田を見て、マイケルはやれやれと言った風に溜め息を吐いた。