第39回戦 忍び寄る鴻海テリー・ゴウ③
(2014年9月頃)
「フカダ…。今日は裁判なの。弁護士を雇うお金も無いから、心細いわ」
台湾から、電話がかかって来た。マイケルの台湾公開企業アトム・テクノロジーの秘書ジュディ、現在は清算人だ。
元株主の黄氏は、納税義務の無い清算会社アトムを訴えた。つまり、なくなった会社が税金を払っていなかったと主張して損害賠償請求を行ない、マイケルの知的財産権は全て株主にあると主張しているのだ。
「清算結了後の納税義務を怠った件でしょ?会社はもう無いのに、負けるわけないよ。頑張って」
「フカダは台湾の事、分かっていない。台湾は青幇が国会も警察も司法も全てコントロールしているのよ」
「でも、さすがに存在しない会社の納税義務を議論するとか、ちょっと難しいんじゃないかな。淡々と事実を応えれば大丈夫だよ」
深田はジュディを諭して電話を切った。少し、落ち着いてくれたらいいけど。
自分も最初は裁判が怖かった。でも、何も悪い事をしていないので事実を淡々と述べるだけでいいということが分かった。
マイケルが2005年にFBI被害者保護プログラムでアメリカへ亡命し、その後の公開会社アトムの清算手続きを行なったのはジュディだった。
「まったく、どいつもこいつも・・・」
中国共産党配下のスパイと組んだ青幇はしつこい。こないだの産業開発センターにも元副社長がパシウム・ディスプレイの権利を求めてきたところだ。
― パシウム・ディスプレイ
ま
だ出来上がってもいない、マイケルが構想中のディスプレイを自分のものだなんて、どうにかしている。パシウム・ディスプレイのネーミングの時に、深田とマ
イケルが口論になったことがあったが、その時に仲裁に入ってくれたのは紛れもないエリちゃんだった。パシウムでは、日本人に発音がしにくいしイメージが湧
かないから、情熱と掛け合わせて『パシオン』にしようと深田が提案したところから口論になったのだ。
「萌絵ちゃん、マイケルさんがパシウムと呼ぶには理由があるんですから、そうしてあげたらいいんじゃないですか?」
あの時もエリはそう言って深田の肩をポンと叩いた。
エリちゃん。なんでだ。
また涙が出そうになったが、グッと堪えた。
きっと、すぐにジュディから報告の電話が入るだろう。
感傷に浸っている場合では無い。
何が起こってもいつでも冷静でいなければ、頼りにしてもらえる人間にはなれないのだ。
ルルル。
オフィスの電話が鳴った。
「フカダ、大変よ」
ジュディだ。
「今度は何?」
「黄氏がパシウム・ディスプレイの権利を主張してきた」
「何?マイケルの3Dディスプレイの権利を請求してきたの?」
「違う、300万ドルが払えないなら、ヴァトロニと『パシウム・ディスプレイの権利』を株主に譲渡せよと名指しで主張してきたの」
受話器を持つ手が震えた。
パシウム・ディスプレイなんて商標を知っているのは、10人もいない。産業開発センターでは「光線再生方式のディスプレイ」として提案したので、知っているのは取引先一社と横田君、ダイちゃん、マイケルと私くらいだ。
そして、エリちゃん。
「元株主はディスプレイ開発していないでしょ?関係ないじゃない」
「事情が変わったの、フカダ。そこの社員の話によると、最近、ディスプレイ工場を買った台湾企業が元株主の会社に出資したらしいの」
ディスプレイ工場を買った台湾企業?
いったい、それってどこの会社だ?
TO BE CONTINUED
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2016年2月23日火曜日
2016年2月18日木曜日
事件サマリー:第38回戦 忍び寄る鴻海テリー・ゴウ②
「そんな事ができるんですか!?」
都立技術開発センター(仮名)の光学エンジニアの横田君は声を上げた。
米半導体大手に頼まれて作り始めたリアルタイム3D合成チップのめどが付いたので、現実の空間と類似の光線を再生して映像が浮き上がって見える光線再生方式のディスプレイの研究を一緒にしようという提案をしたのだ。
「その名もパシウム・ディスプレイだ」
マイケルは嬉しそうに答えた。いつの間にか商標まで考えているらしい。光のパスを再生するのでパシウムか。
「光線再生方式のディスプレイ、僕もいつかは作れると思っていたんです。前の会社は、全然冒険させてくれないから、研究がやりたくて僕はここに移って来たんですよ」
横田君は瞳をキラキラさせた。
夢を捨ててないエンジニアは素敵だ。
横田君はカチャカチャと光学シミュレータを叩き、マイケルの理論が可能か銅貨を確認した。
「できる。理論上はできる」
横田君はパソコンに向かって頷いた。
「理論上できても、そこからが難しいんです」
パイオニアで3Dディスプレイを作ってきたダイちゃんが釘を刺した。
ハードウェア作りはソフトウェア作り以上に難しい。というか、細かいハードルが多い。物理的な世界が関わってくるので、つまらない話だがチップ設計に成功しても電流や抵抗、歩留まりなどでコケることなんてザラだ。
特に光は、電波と同様で一筋縄ではいかない。光は曲がる、散乱する、屈折率は色によって異なる、など現実世界でテストする時とシミュレーション上でテストするのでは天と地ほどの差が発生する。
「焦点はピクセルをいかに作るか」
マイケルは呟く。
「材料に何を選択するか、材料の開発も必要になるでしょう」
ダイちゃんがマイケルに続く。
「今から材料なんて現実的ではない。ありものでラフな実験を行なってからブラッシュアップをするのはいかがでしょうか」
横田君が提案をした。
「でも、こんな巨大プロジェクト、どこから手を付けましょう?」
「まずは、複数の光線を発生させられるピクセルの研究開発から始めよう」
「そうしましょう。では、助成金申請には技術評価が必要なので、僕も資料作成をお手伝いします」
横田君は大はしゃぎだった。
そ れはそうだ。研究が好きな人なら、できそうでできなかった未知の分野に踏み出してみたいという願いを持っている。挑戦したい。でも、自分ではカバーできな い技術がある。だから、エンジニア同志でコラボレーションするのが理想だが、組むエンジニアが自分の理想のソリューションを持っているとは限らない。で も、チップで映像の高速処理ができるなら、可能性は低くは無い。
技術評価の日がやって来た。
審査員に技術説明を行ない、反応はかなり良かった。
待合室に戻ると横田君が駈け込んで来た。
「深田さん、技術点において横田・R社チームがぶっちぎりナンバーワンです!」
「ハイ・ファイブ!!」
深田、横田、マイケル、ダイちゃんは手を上げてバチーンとタッチをした。
ディスプレイを作るのでなく、光線再生型ピクセルの開発にテーマを絞ったのが良かったのだ。
お台場からの帰り道、全員が興奮を隠しきれない様子だった。
リアルタイム3Dを開発してきたマイケルに浮かび上がる3Dディスプレイの研究を続けてきたダイちゃん、皆の思い描いていた夢の研究に一歩近づいたのだ。
数日後、横田君から「深田さん。後でお電話宜しいですか?助成金事業の件なんですけど」とメールがあった。
深田は胸騒ぎがして、すぐに横田君に電話を掛けた。
「どうしたの?」
「実は、小林英里さんが・・・」
「エリちゃん?元副社長の?」
「その、小林英里さんがR社いなくなったので契約は出来ないと言われました」
「どういうことなの?」
「パシウム・ディスプレイの権利を小林英里さんが主張しているから、権利争いに巻き込まれたくないのでうちは関わりたくないそうなんです。だから、本当にごめんなさい」
さっきまで明るかった視界が、急に真っ暗になったような気がした。
エリちゃん。あんなに何年も仲良くやって来たのに、いなくなってもとことん妨害するのか。
パシウム・ディスプレイ。
始まってすらいない製品の、権利の取り合いが始まった。
TO BE COTINUED
都立技術開発センター(仮名)の光学エンジニアの横田君は声を上げた。
米半導体大手に頼まれて作り始めたリアルタイム3D合成チップのめどが付いたので、現実の空間と類似の光線を再生して映像が浮き上がって見える光線再生方式のディスプレイの研究を一緒にしようという提案をしたのだ。
「その名もパシウム・ディスプレイだ」
マイケルは嬉しそうに答えた。いつの間にか商標まで考えているらしい。光のパスを再生するのでパシウムか。
「光線再生方式のディスプレイ、僕もいつかは作れると思っていたんです。前の会社は、全然冒険させてくれないから、研究がやりたくて僕はここに移って来たんですよ」
横田君は瞳をキラキラさせた。
夢を捨ててないエンジニアは素敵だ。
横田君はカチャカチャと光学シミュレータを叩き、マイケルの理論が可能か銅貨を確認した。
「できる。理論上はできる」
横田君はパソコンに向かって頷いた。
「理論上できても、そこからが難しいんです」
パイオニアで3Dディスプレイを作ってきたダイちゃんが釘を刺した。
ハードウェア作りはソフトウェア作り以上に難しい。というか、細かいハードルが多い。物理的な世界が関わってくるので、つまらない話だがチップ設計に成功しても電流や抵抗、歩留まりなどでコケることなんてザラだ。
特に光は、電波と同様で一筋縄ではいかない。光は曲がる、散乱する、屈折率は色によって異なる、など現実世界でテストする時とシミュレーション上でテストするのでは天と地ほどの差が発生する。
「焦点はピクセルをいかに作るか」
マイケルは呟く。
「材料に何を選択するか、材料の開発も必要になるでしょう」
ダイちゃんがマイケルに続く。
「今から材料なんて現実的ではない。ありものでラフな実験を行なってからブラッシュアップをするのはいかがでしょうか」
横田君が提案をした。
「でも、こんな巨大プロジェクト、どこから手を付けましょう?」
「まずは、複数の光線を発生させられるピクセルの研究開発から始めよう」
「そうしましょう。では、助成金申請には技術評価が必要なので、僕も資料作成をお手伝いします」
横田君は大はしゃぎだった。
そ れはそうだ。研究が好きな人なら、できそうでできなかった未知の分野に踏み出してみたいという願いを持っている。挑戦したい。でも、自分ではカバーできな い技術がある。だから、エンジニア同志でコラボレーションするのが理想だが、組むエンジニアが自分の理想のソリューションを持っているとは限らない。で も、チップで映像の高速処理ができるなら、可能性は低くは無い。
技術評価の日がやって来た。
審査員に技術説明を行ない、反応はかなり良かった。
待合室に戻ると横田君が駈け込んで来た。
「深田さん、技術点において横田・R社チームがぶっちぎりナンバーワンです!」
「ハイ・ファイブ!!」
深田、横田、マイケル、ダイちゃんは手を上げてバチーンとタッチをした。
ディスプレイを作るのでなく、光線再生型ピクセルの開発にテーマを絞ったのが良かったのだ。
お台場からの帰り道、全員が興奮を隠しきれない様子だった。
リアルタイム3Dを開発してきたマイケルに浮かび上がる3Dディスプレイの研究を続けてきたダイちゃん、皆の思い描いていた夢の研究に一歩近づいたのだ。
数日後、横田君から「深田さん。後でお電話宜しいですか?助成金事業の件なんですけど」とメールがあった。
深田は胸騒ぎがして、すぐに横田君に電話を掛けた。
「どうしたの?」
「実は、小林英里さんが・・・」
「エリちゃん?元副社長の?」
「その、小林英里さんがR社いなくなったので契約は出来ないと言われました」
「どういうことなの?」
「パシウム・ディスプレイの権利を小林英里さんが主張しているから、権利争いに巻き込まれたくないのでうちは関わりたくないそうなんです。だから、本当にごめんなさい」
さっきまで明るかった視界が、急に真っ暗になったような気がした。
エリちゃん。あんなに何年も仲良くやって来たのに、いなくなってもとことん妨害するのか。
パシウム・ディスプレイ。
始まってすらいない製品の、権利の取り合いが始まった。
TO BE COTINUED
事件サマリー:【第37回戦】忍び寄る鴻海テリー・ゴウ①
(本編です。2014年暮れごろの話)
「リアルタイム3Dチップを作ろうと思う」
マイケルが唐突に言い出した。
「ハァ?」
深田は面食らった。こないだ作ったばかりのVatroni低遅延型動画伝送システムが出来上がったところで、まだ販売プロモーションにもロクに入っていない。
「ちょっと待ってよ。まだ無線動画伝送システム売って、回収しないといけないんです」
「新製品が無いと売れないだろう。というか、もう殆どできた」
マイケルは事もなげに答えるので深田はずっこけた。
実 は、この世にリアルタイム3D合成ソリューションは存在しない。3D映画は右目と左目の映像を撮るために二つのカメラで撮影して、奥行き感を表現するのに CG屋がリタッチしているので異常に時間が掛かるし、コストも半端ない。ハリウッドでは3D映画製作の予算に数十億円かけることもザラだ。
「いつの間に作ってたのよ?」
「え?米大手半導体企業がリアルタイム3Dモデリングチップを一緒に作ろうって頼んできたので作っていたけど、フカダが忙しそうだから、言うのを忘れていただけだ」
「で、どこまでできたの?」
「カメラを複数台繋いで、システムに通すと3Dモデリングが出てくる」
「は、実写?」
「そうだ。リアルタイム実写3Dだ」
「そんなことできるの?」
「人間の目と同じだ。視差から奥行きを計算するだけだろ?それを高速でやればいいだけの話じゃないか」
今にも『地球人は知能が低いからなぁ』と言った雰囲気で宇宙人マイケルは淡々と答える。今の世の中、3Dモデリングの計算には何分もかかるのが普通だそれがリアルタイムなんてやばすぎる。
「そんなチップ作っちゃったら、またスパイが押し寄せてくるから気を付けてよ!」
深田はマイケルに抗議した。
マイケルと出会ってから第迷惑だ。
こいつは米軍の音速機用遠隔操作システムを作って以来、中国人民解放軍、国安諜報員、台湾暴力団青幇、その配下のフロント企業、日本からは在日朝鮮系のフロント企業やらが波のように押し寄せてきている。
「だから米大手と作ったんだよ。何かあったら、すぐに俺の代わりに訴訟してくれるだろう。それに、フカダはインテリヤクザが来たって、法廷でヤクザ弁護士が出てきたって怒鳴って追い返すような鬼子じゃないか」
マイケルは応える。
「なんだとぉ!!」
深田は額に青筋が立った。インテリヤクザとの怒鳴り合いの戦いや、柴田睦夫共産党議員お抱え弁護士梶原利之のチンピラぶりに深田がどれだけストレスを感じてきたかと思い返すと怒りでプルプルしてきた。
「怒るな、鬼子」
最近、周囲の中国人が私を鬼子と呼ぶようになったと思ったら、どうやらマイケルが言いふらしているようだ。
ピンポーン。
オフィスのインターホンが鳴る。
「こんにちは!ディスプレイ開発のダイちゃんです」
元パイオニアのディスプレイエンジニアのダイちゃんだ。
「マイケルさんに呼ばれてきました」
「え、何の件ですか?」
「映像が浮かび上がる3Dディスプレイの開発で伺いましたが」
ダイちゃんの言葉に深田は噴き出した。
そんな話聞いたことも無い。
「マイケル!まだ3Dチップも出来上がってないのに、3Dディスプレイ作る気なの?いい加減にしてよ。会社がパンクする!」
深田はキッとマイケルを睨み付ける。これ以上開発費ばっかりかけられたら、開発費を回収するどころの騒ぎじゃない。
「大丈夫だ。デコーダもあるし、あとは光学シミュレーションとマルチ光線ピクセルの開発だけで終わる」
「絶対にそれだけで終わらないし、そんな開発にかけるお金は無い!」
開発は素晴らしい要素技術があっても、部品の組み合わせや信号同期等のつまらないところで意外と時間が掛かる。時間が掛かればそれだけ経費が飛んでいくのだ。
「深田さん。お金なら、機構と一緒に助成金を取ればいいんですよ」
ダイちゃんはニコニコしながら答えた。
「そんなこと、できるの?」
「はい。東京都の技術開発センター(仮名)に行けばいいのです」
ダイちゃんの言葉で、三人はさっそくセンターのあるお台場に向かった。
続く
「リアルタイム3Dチップを作ろうと思う」
マイケルが唐突に言い出した。
「ハァ?」
深田は面食らった。こないだ作ったばかりのVatroni低遅延型動画伝送システムが出来上がったところで、まだ販売プロモーションにもロクに入っていない。
「ちょっと待ってよ。まだ無線動画伝送システム売って、回収しないといけないんです」
「新製品が無いと売れないだろう。というか、もう殆どできた」
マイケルは事もなげに答えるので深田はずっこけた。
実 は、この世にリアルタイム3D合成ソリューションは存在しない。3D映画は右目と左目の映像を撮るために二つのカメラで撮影して、奥行き感を表現するのに CG屋がリタッチしているので異常に時間が掛かるし、コストも半端ない。ハリウッドでは3D映画製作の予算に数十億円かけることもザラだ。
「いつの間に作ってたのよ?」
「え?米大手半導体企業がリアルタイム3Dモデリングチップを一緒に作ろうって頼んできたので作っていたけど、フカダが忙しそうだから、言うのを忘れていただけだ」
「で、どこまでできたの?」
「カメラを複数台繋いで、システムに通すと3Dモデリングが出てくる」
「は、実写?」
「そうだ。リアルタイム実写3Dだ」
「そんなことできるの?」
「人間の目と同じだ。視差から奥行きを計算するだけだろ?それを高速でやればいいだけの話じゃないか」
今にも『地球人は知能が低いからなぁ』と言った雰囲気で宇宙人マイケルは淡々と答える。今の世の中、3Dモデリングの計算には何分もかかるのが普通だそれがリアルタイムなんてやばすぎる。
「そんなチップ作っちゃったら、またスパイが押し寄せてくるから気を付けてよ!」
深田はマイケルに抗議した。
マイケルと出会ってから第迷惑だ。
こいつは米軍の音速機用遠隔操作システムを作って以来、中国人民解放軍、国安諜報員、台湾暴力団青幇、その配下のフロント企業、日本からは在日朝鮮系のフロント企業やらが波のように押し寄せてきている。
「だから米大手と作ったんだよ。何かあったら、すぐに俺の代わりに訴訟してくれるだろう。それに、フカダはインテリヤクザが来たって、法廷でヤクザ弁護士が出てきたって怒鳴って追い返すような鬼子じゃないか」
マイケルは応える。
「なんだとぉ!!」
深田は額に青筋が立った。インテリヤクザとの怒鳴り合いの戦いや、柴田睦夫共産党議員お抱え弁護士梶原利之のチンピラぶりに深田がどれだけストレスを感じてきたかと思い返すと怒りでプルプルしてきた。
「怒るな、鬼子」
最近、周囲の中国人が私を鬼子と呼ぶようになったと思ったら、どうやらマイケルが言いふらしているようだ。
ピンポーン。
オフィスのインターホンが鳴る。
「こんにちは!ディスプレイ開発のダイちゃんです」
元パイオニアのディスプレイエンジニアのダイちゃんだ。
「マイケルさんに呼ばれてきました」
「え、何の件ですか?」
「映像が浮かび上がる3Dディスプレイの開発で伺いましたが」
ダイちゃんの言葉に深田は噴き出した。
そんな話聞いたことも無い。
「マイケル!まだ3Dチップも出来上がってないのに、3Dディスプレイ作る気なの?いい加減にしてよ。会社がパンクする!」
深田はキッとマイケルを睨み付ける。これ以上開発費ばっかりかけられたら、開発費を回収するどころの騒ぎじゃない。
「大丈夫だ。デコーダもあるし、あとは光学シミュレーションとマルチ光線ピクセルの開発だけで終わる」
「絶対にそれだけで終わらないし、そんな開発にかけるお金は無い!」
開発は素晴らしい要素技術があっても、部品の組み合わせや信号同期等のつまらないところで意外と時間が掛かる。時間が掛かればそれだけ経費が飛んでいくのだ。
「深田さん。お金なら、機構と一緒に助成金を取ればいいんですよ」
ダイちゃんはニコニコしながら答えた。
「そんなこと、できるの?」
「はい。東京都の技術開発センター(仮名)に行けばいいのです」
ダイちゃんの言葉で、三人はさっそくセンターのあるお台場に向かった。
続く
2016年1月18日月曜日
事件サマリー:第36回戦追記 併合上申の謎
36回戦の話は裁判所の手順が少しわかりにくかったと思うので、追記します。
併合上申は、新しい訴訟を古い訴訟に併合するという要求を書いた上申書のことで、新しい訴訟をする時に古い裁判と一緒にやった方が効率がいいので「併合して一緒にやりませんか?」と裁判官にお願いをするシステムです。
これは、両方の裁判官の同意が必要な手続きになります。
このアルファアイティーシステムによる深田新会社への訴訟の旧会社への訴訟との併合上申にはかなり不自然な点がありました。
1.訴状提出日が土曜日であること。
2.最初の担当部署が37部であったこと。
3.なのに、37部で取り扱った裁判官と書記官の名前が存在しないこと。問い合わせても「いない」としか言われなかったということ。
4.訴状提出が土曜日で翌月曜日には37部を素通りして48部に到着して同一期日同一法廷で口頭弁論が開かれることになったということ
5.48部にクレームすると、「併合されていない」と藤井書記官からの回答が来たこと
6.併合されていないなら、何故、37部素通りして48部にこの裁判が移動しているのかというふざけた話が残っているということ
7.梶原利之の上申書には「48部での訴訟における進行についても、新しい訴訟が提起されたら48部に口頭弁論を併合することが予定されている」と裏で遠田真嗣裁判官と話を付けていることを自ら露呈している。
下記、証拠画像です。
これ梶原利之弁護士が作った上申書の一ページ目ね。

問題の一文は赤線引いてます。
いつのまに遠田裁判官と連絡して同意を取ったのか?
裁判記録を見ても一切記録はありません。

こういうインチキをして一般市民を騙すのは、どうかと思うんですね。
私は執念深い性格なので発見しましたが、何も知らない人だったら騙されていると思うんですよ。
私は、そういうシステムの歪みみたいなのを悪用されていることが許せませんし、もしも、他の人だったらアッサリ騙されて四重請求裁判にあっという間に負けていたと思います。
これからも激しい戦いが続くと思いますが、皆様の応援を有り難く受け止めています。
併合上申は、新しい訴訟を古い訴訟に併合するという要求を書いた上申書のことで、新しい訴訟をする時に古い裁判と一緒にやった方が効率がいいので「併合して一緒にやりませんか?」と裁判官にお願いをするシステムです。
これは、両方の裁判官の同意が必要な手続きになります。
このアルファアイティーシステムによる深田新会社への訴訟の旧会社への訴訟との併合上申にはかなり不自然な点がありました。
1.訴状提出日が土曜日であること。
2.最初の担当部署が37部であったこと。
3.なのに、37部で取り扱った裁判官と書記官の名前が存在しないこと。問い合わせても「いない」としか言われなかったということ。
4.訴状提出が土曜日で翌月曜日には37部を素通りして48部に到着して同一期日同一法廷で口頭弁論が開かれることになったということ
5.48部にクレームすると、「併合されていない」と藤井書記官からの回答が来たこと
6.併合されていないなら、何故、37部素通りして48部にこの裁判が移動しているのかというふざけた話が残っているということ
7.梶原利之の上申書には「48部での訴訟における進行についても、新しい訴訟が提起されたら48部に口頭弁論を併合することが予定されている」と裏で遠田真嗣裁判官と話を付けていることを自ら露呈している。
下記、証拠画像です。
これ梶原利之弁護士が作った上申書の一ページ目ね。
問題の一文は赤線引いてます。
いつのまに遠田裁判官と連絡して同意を取ったのか?
裁判記録を見ても一切記録はありません。
こういうインチキをして一般市民を騙すのは、どうかと思うんですね。
私は執念深い性格なので発見しましたが、何も知らない人だったら騙されていると思うんですよ。
私は、そういうシステムの歪みみたいなのを悪用されていることが許せませんし、もしも、他の人だったらアッサリ騙されて四重請求裁判にあっという間に負けていたと思います。
これからも激しい戦いが続くと思いますが、皆様の応援を有り難く受け止めています。
2016年1月17日日曜日
事件サマリー:第36回戦 新法人への訴訟、旧法人への訴訟
(2015年一月、二月頃の話)
新会社は立ち上げから、世界最速の無線動画伝送装置Vatroniが売れ始めた。
それまでのVATRONIは、高速動画圧縮機能しかなかったのだが、それにフルHDを高速で伝送する機能が加わったのだ。
本人が自覚してないのが厄介なのだが、マイケルが作るものはいちいち世界初とか世界一だ。
「え、VATRONIって世界一だったのか?俺は知らなかった。普通に作ったらこうなっただけだ」
と、マイケル自身はこんな調子だ。
本人は自分の知能がどれだけ世の中とかけ離れているのが自覚に乏しいので、マイケルの技術を横取りしたがる輩からマイケルを守るのに周囲は大変なのだ。
「フカダァ!大変!!」
台湾のマイケル元秘書のジュディから電話が入った。
「ジュディ、今度はどうしたの?」
「マイケルの台湾の会社が訴訟されたの!」
「え?清算中でしょ?」
「株主の東元電機の黄茂雄の差し金みたいです。新しい無線動画伝送装置VATRONIの権利を主張してます」
「ブー!!」
深田は飲みかけのお茶を吹いた。
マイケルの台湾の公開会社なんて、10年近く前に解散したのに当時の株主がまだ権利を主張するなんてあり得ない。
しかも、主張する権利は深田の会社の製品だなんて、エレクトロニクス業界王道の「スートゥオウン(訴訟で潰して手に入れろ)」の王道を来ている。どれだけ貪欲なのだ。
ピンポーン
オフィスのチャイムが鳴る。
郵便局員だ。
なんだろうと茶色の封筒を受け取る。
訴状だ。
「また、裁判か!?」
アルファアイティーシステムからの新法人に対する訴状だった。訴状の内容は、前回と殆ど同じでその上添付の証拠は殆ど無かった。
「マイケル、アルファアイティーシステムから新会社への訴訟が始まった!」
「なんだと?内容はなんだ?」
「詐欺だと」
「バカ言え。新会社はアルファアイティーシステムと何の契約も無いし、架空請求の上に四重請求だろ」
アルファアイティーシステムは、旧R社、深田個人、マイケル個人にそれぞれ一千万円、さらに新会社にまで一千万円を請求し、合計四千万円請求してきたのだ。
深田は期日を確認すると、なんと、旧R社の期日と同一日時同一法廷同一裁判官遠田真嗣だ。
「そんな、バカな。新たに裁判を起こすと、東京地裁の50近くある部署にいる数百人の裁判官からランダムに裁判官が選定されるはずなのにそんな事あるか?」
訴状が提出された日は土曜日、37部に配転されたはずの訴状は翌月曜朝には遠田裁判官のいる48部に回されている。
「東京地方裁判所内に絶対に中国工作員がいる」
確信した。
国賠訴訟の内容も部署に訴状が届く前に中国共産党に届いていた。そして、今度は受付素通りで梶原利之弁護士の思い通りになる裁判官のところに訴状が届いている。
深田は、この国の闇に不気味さを覚える。
「一個、二個、三個・・・」
深田は倉庫から在庫の部品を取り出して、数を数えていた。決算の棚卸で数を確認しないといけない。在庫と言っても、清算中の旧会社の在庫だ。
「これが売れたら、まだ資金繰りが楽なんだけど・・・」
新会社にも資金を出しているだけじゃなく、旧会社の分も立替支払いをしているので、この部品がお金になったら一番いいんだけどなと深田は考えた。
「ん、ちょっと待てよ・・・」
そうだ、なんで売らなかったのだ。
忙し過ぎて余った部品を処分するのを忘れていた。
「え?在庫ですか?」
仕入れ元の商社の営業マンが声を上げる。
「そう、これ、処分したいから売って欲しいんです」
「わあ、その高価な部品、確かに売れそうですね!いいですけど、どうしましょう?」
「取りに来てもらってもいいですか?」
「もちろん、いいですよ」
という返事から間もなく商社の営業マンがやってきた。
「そういえば、社長。S社から電話があって、エリさんと一緒に飲もうって誘われているんですよ」
「え、そうなの?」
深田は目が丸くなった。S社と言えば、国の研究所で入札をした会社で、R社はその下請けだった。エリがいなくなって、S社は一度深田のオフィスを無断で荒らしていったが、警察に届けたのに丸ノ内警察は被害届の受理を拒んだことがあったのだ。
「社長、大丈夫ですか?」
営業マンの声で深田は我に返る。
「あ、いや。エリちゃん、親が来て衰弱しきっていて歩くことすらできないって言われたまま連絡が取れないんですけど・・・」
深田の言葉に営業マンは『しまった』という顔をして、「今度、我々も飲みに行きましょうよ!僕、銀座の店で行きたいとこあるんです!」と言って帰って行った。
もやもやした気持ちでその日は終わった。
「でも、まあ、これで問題が一つ片付いて良かった」
そう呟いて深田はソファにもたれかかった。彼女の事は忘れよう。今は、仕事の事だけ考えるのだ。
一般的に、在庫部品はマーケットに出すと一週間くらいで売れてしまうらしいから、さっと換金できれば資金繰りだって助かる。
ところが、それから一週間経っても一カ月経っても商社から連絡は無かった。
「まったく、いつになったら売れるのやら・・・」
そう思っている矢先にオフィスの電話が鳴る。
「はい、R社です」
深田が電話に出ると、部品メーカーだった。
「ふ、深田社長。大変です」
『大変』か、久しぶりに聞いた言葉だ。エリがいる時、毎日のように『大変です』の一言で一日が始まった。
「なんですか、大変って」
「S社がうちに来ました!!」
「ええ、S社が?」
エリと会っているS社がどうして部品メーカーに行くのだ。
「何があったの?」
「実は、伝票を付け替えて欲しいと・・・」
「どういう意味?」
「うちが御社に売った部品をS社のものだと伝票を切り直してほしいと言われました」
「ハァ?そんなこと、できるわけないでしょ?」
「うちもそう言いましたが、S社からは『R社社長の深田萌絵にR社の部品を盗まれた。製品番号はあるから、それを元に伝票を切り直してほしい。公安警察にも相談して許可を得ている』って言われたんです」
「S社には納品終わってて、部品盗むも何も無いんですけど・・・」
うちの会社の部品を、私が盗んで私の会社の倉庫に保管した罪で訴える奴も頭が悪いが、それを真に受ける警察も警察だ。
S社は暴力団と関係があると言われている会社で、社員は頭が悪いと評判の会社だがあまりにも酷い論理構成だし、それを聞く警察もどうかしている。
「というか、うちの部品、私が会社の倉庫に入れててなんかおかしいですかね?」
「そうですよね。うちもそう思って、経理と法務と相談したんですけど、伝票の付け替えは出来ないと回答しました。ところが、おかしなことに製品番号をすべて持っているんです」
「え?」
製品番号を持っているとすれば、こないだ部品を預けた商社だ。商社の営業マン、そういえばS社と飲みに行くと言っていた。
「公安警察も被害届を受理したって・・・」
「本当!?」
「そうなんです。S社はそう言ってました。僕はありえないと思ったんですよ。だって、御社がうちから買った部品を、どうやって御社が盗むんですか?僕は何かおかしいと思うんです」
「そんなことって、あり得る?事件番号分かります?」
「そこまでは聞いてませんが、『嘘だと思うなら公安警察のJ氏に聞いてみろ』と言われました」
深田は絶句した。
公安警察のJ氏。
ファーウェイ事件が始まって以来、一年間深田は公安警察に通い、情報を提供してきた。その担当警部が、なんと私を容疑者としてファーウェイと組んだS社の被害届を受理したのだ。
「この国って・・・」
犯人は被害者になり、被害者が犯人に仕立て上げられる国になったのか。
そういえば、朝鮮総連の弁護士は元公安警察のトップだ。
相談する相手を間違えて、いつの間にか自分が犯人に仕立て上げられている。
いや、エリだ。公安警察にはエリと一緒に通っていた。
エリが失踪して、それまで何もしなかった公安警察がS社に事情聴取に行った。
エリが裏で情報操作していなければ、さすがに公安警察もS社の馬鹿馬鹿しい嘘を真に受けるはずがない。
あの商社のウェブサイトをクリックしてみた。
そこには、人民解放軍の衛星用半導体チップメーカーと提携したとのリンクが貼られていた。
TO BE CONTINUED
http://www.casilsemi.com/index.asp
※ジョエイ・キャンベルはIRS(米国内国歳入庁)の職員だが、彼女を訴訟したらあて先不明で戻って来た。
マイケルの弁護士レイトンからマイケルに連絡があり、「来週、IRSの裁判だから外国に行かないように」と伝えられた。
奇妙なのは日程が決まっていないということだ。
裁判になれば、マイケルは日本に来れなくなるので大損失。
レイトン弁護士は勝手にFBI情報をIRSに流しているので、当てにならない弁護士だ。
こちらからもシリコンバレーで動ける弁護士を探しまわって、
「日本企業にIRS税務監査?あり得ないよ」
という、いつも驚かれるという反応。
残念ながら、少し遠いので受けてもらえなかった。
年末なので、なかなか人が見つからない。
お願いしますと頼むと、
「税務調査は専門外だから」
とのことだ。
「マイケル、ダメだった。税務は専門外だよ」
「脳足りん、深田。これは、租税裁判所の案件では無い。普通のカリフォルニア州立裁判所での裁判だ」
アメリカは普通の裁判所と租税裁判所は別々だ。
「はぁ?どういうこと?」
「俺は『国家不服重』で訴えられた」
「ええ?めちゃくちゃだね」
「新しい弁護士が見つからないように、わざと年末に訴訟提起して年始一番に開廷する気だ」
「新しい弁護士が見つからなかったら?」
「ゲームオーバーだ」
ヤバい。
来週っていっても、今日既に木曜日だ。
よほど、私を黙らせたいらしい。
しかし、Facebookはカリフォルニア州法なので差し止められても、ブログは可能だろうか。
毎日のように、エリちゃんの知人から「Facebook止めろ」とか「ガセネタ流すな」など言われている。
あと、数日。
もし誰か、年末シリコンバレーに居る弁護士が居れば紹介してください。
マイケルに連絡させます。
深田
自分たち、一般の日本人ができないことを何故中国人や在日の一派には可能なのだ。
東京地方裁判所、その闇の深さは絶望の裁判所で語られる以上の深さを予感させた。
TO BE CONTINUED
2016年1月4日月曜日
事件サマリー:【第35回戦】 公安警察、ついに始動
「一個、二個、三個・・・」
深田は倉庫から在庫の部品を取り出して、数を数えていた。決算の棚卸で数を確認しないといけない。在庫と言っても、清算中の旧会社の在庫だ。
「これが売れたら、まだ資金繰りが楽なんだけど・・・」
新会社にも資金を出しているだけじゃなく、旧会社の分も立替支払いをしているので、この部品がお金になったら一番いいんだけどなと深田は考えた。
「ん、ちょっと待てよ・・・」
そうだ、なんで売らなかったのだ。
忙し過ぎて余った部品を処分するのを忘れていた。
「え?在庫ですか?」
仕入れ元の商社の営業マンが声を上げる。
「そう、これ、処分したいから売って欲しいんです」
「わあ、その高価な部品、確かに売れそうですね!いいですけど、どうしましょう?」
「取りに来てもらってもいいですか?」
「もちろん、いいですよ」
という返事から間もなく商社の営業マンがやってきた。
「そういえば、社長。S社から電話があって、エリさんと一緒に飲もうって誘われているんですよ」
「え、そうなの?」
深田は目が丸くなった。S社と言えば、国の研究所で入札をした会社で、R社はその下請けだった。エリがいなくなって、S社は一度深田のオフィスを無断で荒らしていったが、警察に届けたのに丸ノ内警察は被害届の受理を拒んだことがあったのだ。
「社長、大丈夫ですか?」
営業マンの声で深田は我に返る。
「あ、いや。エリちゃん、親が来て衰弱しきっていて歩くことすらできないって言われたまま連絡が取れないんですけど・・・」
深田の言葉に営業マンは『しまった』という顔をして、「今度、我々も飲みに行きましょうよ!僕、銀座の店で行きたいとこあるんです!」と言って帰って行った。
もやもやした気持ちでその日は終わった。
「でも、まあ、これで問題が一つ片付いて良かった」
そう呟いて深田はソファにもたれかかった。彼女の事は忘れよう。今は、仕事の事だけ考えるのだ。
一般的に、在庫部品はマーケットに出すと一週間くらいで売れてしまうらしいから、さっと換金できれば資金繰りだって助かる。
ところが、それから一週間経っても一カ月経っても商社から連絡は無かった。
「まったく、いつになったら売れるのやら・・・」
そう思っている矢先にオフィスの電話が鳴る。
「はい、R社です」
深田が電話に出ると、部品メーカーだった。
「ふ、深田社長。大変です」
『大変』か、久しぶりに聞いた言葉だ。エリがいる時、毎日のように『大変です』の一言で一日が始まった。
「なんですか、大変って」
「S社がうちに来ました!!」
「ええ、S社が?」
エリと会っているS社がどうして部品メーカーに行くのだ。
「何があったの?」
「実は、伝票を付け替えて欲しいと・・・」
「どういう意味?」
「うちが御社に売った部品をS社のものだと伝票を切り直してほしいと言われました」
「ハァ?そんなこと、できるわけないでしょ?」
「うちもそう言いましたが、S社からは『R社社長の深田萌絵にR社の部品を盗まれた。製品番号はあるから、それを元に伝票を切り直してほしい。公安警察にも相談して許可を得ている』って言われたんです」
「S社には納品終わってて、部品盗むも何も無いんですけど・・・」
うちの会社の部品を、私が盗んで私の会社の倉庫に保管した罪で訴える奴も頭が悪いが、それを真に受ける警察も警察だ。
S社は暴力団と関係があると言われている会社で、社員は頭が悪いと評判の会社だがあまりにも酷い論理構成だし、それを聞く警察もどうかしている。
「というか、うちの部品、私が会社の倉庫に入れててなんかおかしいですかね?」
「そうですよね。うちもそう思って、経理と法務と相談したんですけど、伝票の付け替えは出来ないと回答しました。ところが、おかしなことに製品番号をすべて持っているんです」
「え?」
製品番号を持っているとすれば、こないだ部品を預けた商社だ。商社の営業マン、そういえばS社と飲みに行くと言っていた。
「公安警察も被害届を受理したって・・・」
「本当!?」
「そうなんです。S社はそう言ってました。僕はありえないと思ったんですよ。だって、御社がうちから買った部品を、どうやって御社が盗むんですか?僕は何かおかしいと思うんです」
「そんなことって、あり得る?事件番号分かります?」
「そこまでは聞いてませんが、『嘘だと思うなら公安警察のJ氏に聞いてみろ』と言われました」
深田は絶句した。
公安警察のJ氏。
ファーウェイ事件が始まって以来、一年間深田は公安警察に通い、情報を提供してきた。その担当警部が、なんと私を容疑者としてファーウェイと組んだS社の被害届を受理したのだ。
「この国って・・・」
犯人は被害者になり、被害者が犯人に仕立て上げられる国になったのか。
そういえば、朝鮮総連の弁護士は元公安警察のトップだ。
相談する相手を間違えて、いつの間にか自分が犯人に仕立て上げられている。
いや、エリだ。公安警察にはエリと一緒に通っていた。
エリが失踪して、それまで何もしなかった公安警察がS社に事情聴取に行った。
エリが裏で情報操作していなければ、さすがに公安警察もS社の馬鹿馬鹿しい嘘を真に受けるはずがない。
あの商社のウェブサイトをクリックしてみた。
そこには、人民解放軍の衛星用半導体チップメーカーと提携したとのリンクが貼られていた。
TO BE CONTINUED
http://www.casilsemi.com/index.asp
2016年1月1日金曜日
番外戦 事件サマリー:【番外戦7】逆襲のジョエイ⑦
※ジョエイ・キャンベルはIRS(米国内国歳入庁)の職員だが、彼女を訴訟したらあて先不明で戻って来た。
マイケルの弁護士レイトンからマイケルに連絡があり、「来週、IRSの裁判だから外国に行かないように」と伝えられた。
奇妙なのは日程が決まっていないということだ。
裁判になれば、マイケルは日本に来れなくなるので大損失。
レイトン弁護士は勝手にFBI情報をIRSに流しているので、当てにならない弁護士だ。
こちらからもシリコンバレーで動ける弁護士を探しまわって、
「日本企業にIRS税務監査?あり得ないよ」
という、いつも驚かれるという反応。
残念ながら、少し遠いので受けてもらえなかった。
年末なので、なかなか人が見つからない。
お願いしますと頼むと、
「税務調査は専門外だから」
とのことだ。
「マイケル、ダメだった。税務は専門外だよ」
「脳足りん、深田。これは、租税裁判所の案件では無い。普通のカリフォルニア州立裁判所での裁判だ」
アメリカは普通の裁判所と租税裁判所は別々だ。
「はぁ?どういうこと?」
「俺は『国家不服重』で訴えられた」
「ええ?めちゃくちゃだね」
「新しい弁護士が見つからないように、わざと年末に訴訟提起して年始一番に開廷する気だ」
「新しい弁護士が見つからなかったら?」
「ゲームオーバーだ」
ヤバい。
来週っていっても、今日既に木曜日だ。
よほど、私を黙らせたいらしい。
しかし、Facebookはカリフォルニア州法なので差し止められても、ブログは可能だろうか。
毎日のように、エリちゃんの知人から「Facebook止めろ」とか「ガセネタ流すな」など言われている。
あと、数日。
もし誰か、年末シリコンバレーに居る弁護士が居れば紹介してください。
マイケルに連絡させます。
深田
番外戦 事件サマリー:【番外戦6】レイトンの請求書
番外戦 事件サマリー:【番外編4】逆襲のジョエイ④レイトン氏のメール
一つの訴訟には勝ちそうだった。
もう一つの訴訟には勝った。
気持ちは晴れたはずだったのに、シリコンバレーで警察がマイケルを探しまわっていると聞いて眠れない日々へと暗転したのだ。
「はぁ」
ため息がちにオフィスのドアを開ける。銀座のオフィスは今朝も料亭から漂う焼き魚の匂いが充満しており、マイケルはオーガニックフラワーの消臭剤でそれと戦っていた。
「マイケル、弁護士のレイトンは何とかしてくれないの?」
深田はどかっと座って腕を組んだ。
「レイトンのメールを読んだか?」
「え?ジョエイが諜報機関の名前教えてって言ってくれってヤツ?」
「英語音痴の脳足りん。これを見ろ」
マイケルは不満気にメールを見せた。
『マイケル、私は今朝、ジョエイ・キャンベルとニコラス・コナーズとカンファレンスコールを開いた。
ジョエイは君が関係する捜査機関、諜報機関の人間の名前を教えてくれたら、その命令系統を遡って全てを調べ上げたら、そこで税務調査を打ち切っても構わないと言っている。
(訳注: レイトンはマイケルを守っていたFBI証人保護プログラムの担当捜査官ニコラス・T・フォレストにFBIサンノゼオフィスで会った。)
ニコラス・フォレストはこの捜査は彼の判断で打ち切ったので、IRSの調査を止めることはないと答えた。
ジョエイは再度言うが、早く諜報機関の名前を教えてくれたら、それで良いと言ってるんだ』
「どういうこと?」
「レイトンがFBIに手を回したようだ。それに10万ドルを請求してきた」
「なにそれ!マイケルのことを弁護士として守ってないじゃない。それに、なんで彼はいつも『証人保護プログラム』って言うの?」
「レイトンがFBIに行っただろ?何故彼が自分で行く必要がある?ジョエイが自分でFBIに行くと疑われるから、レイトンを使っている。そして、レイトンが被害者保護プログラムを証人保護プログラムと呼び換えてるのは、俺をジョエイに高く売る為だ」
マイケルはやれやれと椅子の背にもたれかかった。
被害者保護プログラムはレイプやストーカー、殺人予告等の被害者を守る為のプログラムで証人保護プログラムよりも下位に位置する。
証人保護プログラムで守られるのは、国際裁判や大手級マフィア等の大きな刑事裁判や国際裁判での重要証人であって意味が異なる。
被害者保護プログラムは個人の利益を守り、証人保護プログラムは国や国民全体の利益を守るから敵側に売る時の値段が違う。
レイトンは、ジョエイにマイケルを国際裁判の証人だと思わせて、情報の取引をしてなければ、弁護士がそんな書き間違いを何度も繰り返すはずがない。
「なんでレイトンなんか雇ったの!?」
「レイトンから電話がかかって来るまで、俺が何人の弁護士に相談したと思ってるんだ。赤字のR&Dセンターの弁護したって、金にならんから断られまくったよ」
「マイケル、いま、レイトンから電話があるまでって?」
「ああ、俺を断わった弁護士が俺との電話を切った瞬間にレイトンから電話がかかってきて『税務弁護の仕事くれ』って言われたらしい。それでレイトンが俺に紹介された」
「怪しくない!?」
深田は声を上げた。
レイトン弁護士がジョエイに情報を流しているとしたら、ニコラス・T・フォレスト捜査官の名前だけでなく、米大使館にいるFBI捜査官の名前も、彼に報告した警察官、公安警察、検察官、全ての名前が売られた可能性がある。
「これが訴訟社会アメリカの成れの果てさ」
弁護士が顧客の情報を売る。それが、ストリートスマートと呼ばれるということか。
番外戦 事件サマリー:【番外戦3】逆襲のジョエイ③
早朝のシリコンバレーオフィスにまた警察が来た。エンジニアによると、例の中国系警官だった。
警官は、2011年から12年にかけてマイケルが日本で詐欺を働いた国際犯罪団の人物だと刑事告訴されたことを仄めかし、また、IRS(合衆国内国歳入庁)の職員に対して脅迫を行なったので色々話を聞きたいと言ってきたのだ。
「2011年から12年?」
その頃、深田は体調が安定しておらず、取引と言えばアルファアイティシステムとしかなかった。それも、プログラムを預けたら持ち逃げされて、その後アルファアイティシステムから詐欺だと訴えられたことはあった。
それに、IRSから脅迫されたことはあっても脅迫したことはないししようもない。
そもそも歳入庁が、日本法人のうちに横ヤリを入れて来た頃の経緯を考えよう。
社民党福島みずほの夫の仲間である梶原利之弁護士に協力していた裁判官遠田真嗣について、裁判所にクレームを付けたのが3月。
中国が日本に対してミサイル発射したのが3月の終わり頃。
遠田真嗣裁判官が青森に左遷されたのが4月。そのミサイルにうちの技術が使われている可能性が無いか米国防関連の人間から問い合わせを受けたのがその後。
その直後にIRSのジョエイ・キャンベルは現れた。うちのエンジニアがジョエイにドアノブの無い部屋に何時間も軟禁されたのが4月末。
それで、弁護士を雇おうと言う話になったのだ。
そうしたら、たまたま税務専門弁護士から売り込みの電話が入った。それか、弁護士のジェラルド・レイトン。バーリナーコーヘンという大手の弁護士だ。
雇ってみるとレイトンはうちの弁護よりもジョエイの弁護に必死だった。
これではどうしようもないと思い、ジョエイについて調べ始めた。
ジョエイは馬英九のベンチャーキャピタルのファンドマネージャーだったことがネットで分かり、やっぱり台湾系のスパイである可能性が浮上した。
そのことをメールで知人に伝えると、そのサイトのページが消えてなくなった。あの時と同じだ。
さらに調べるとジョエイ・キャンベルはマイクホンダの協力を得ていることが分かった時にアメリカの保守議員達にメールを送った。
それが今年の6月4日だ。翌日、マイクホンダが政治資金の見返りに公的権力を使ったとしたかどで倫理局からの捜査が始まった。
ジョエイは6月20日にうちに対して破産宣告を行うと宣言していたが、マイクホンダの調査が始まって以来、彼女は静かになった。
その後、私はジョエイを不法行為で訴えた。
9月29日、最高裁から領事館を経由してIRSのオフィスに訴状が届けられたが、歳入庁の答えはジョエイはいないだった。
10月5日、静かになっていたジョエイがまたファックスを送ってきた。「ハンドラーの名前を20日までに言え」(さもなければ、破産宣告してやる)と書かれていた。ハンドラーはマスタースパイのことだ。私はアイドルだったことはあっても、スパイだったことはない。
FBI保護プログラムの担当捜査官の名前を伝えたが、彼女は満足しなかった。
私は困り果てた。
10月19日、アメリカの保守系議員にIRSが諜報活動をしている件で手紙を出した。ベトナム戦争時代にスパイ嫌疑で五年間拷問を受けたジョンマケインだ。彼ならこの恐怖を、きっと分かってくれる。
10月20日、ジョエイから連絡は無かった。
26日の朝、マケインからサンクスレターが届いた。内容は「手紙はIRSに転送したよ。ありがとう」だった。ニュースを見ると、IRSの長官コスキネンが弾劾裁判に掛けられることになったのだったが理由を知ってるジャーナリストは居なかった。
11月25日、アルファアイティ藤井との本人弁論で彼はうちのプログラムを自分のパソコンに入れて保管していると答えた。ソフトウェアの開発も認識していたが、その義務は果たさなかったことも明らかになった。そう、自体はこちらに有利になった。
翌朝、ジョエイから「関わった全ての諜報機関の名前を言え」と連絡があった。
27日、私は三菱東京UFJ銀行に裁判で勝った。その後、シリコンバレーのオフィスに警察が現れた。
マイクホンダは失脚したはずなのに、何故こんなにジョエイは権勢を振るってくるのかと調べると一つ分かった。
マイクホンダは11月23日に韓国系議員と組んで、日本の従軍慰安婦反対運動チームを結成していた。より資金を得て強くなっているのだ。
何故、うちのような数人しかいない会社を中共は必死に叩く?
自分達が気付いてない何かを私達は握っているのだろうか。
番外戦 事件サマリー:【番外戦2.】逆襲のジョエイ②
(このブログは去年11月28日、三菱東京UFJ銀行の訴訟に勝った翌日のものです)
葡萄の美酒、夜光の杯。
お気に入りの王翰の漢詩だ。
戦地に行く前にワインを楽しむ様子を謳っている。
昨夜は、お好み焼きと共に勝利の美酒に浸った。2年ぶりに清々しい気分で楽しくワインを楽しんだ。FBFにお祝いしてもらったのだ。
判決文を見て泣けた。
そして、800近いイイねをありがとうと思うと更に泣けてきた。
何年も不気味な嫌がらせに晒されてきて、精神的な限界を何度も味わされたけど、暗くて長いトンネルの出口が漸く見えたようだった。
目の前で戦っている相手と、本当の敵が異なる感覚。まず、一勝しただけでも一つ荷を降ろせた気がした。
二軒目はまた別のFBFにお祝いしてもらって、一層盛り上がった。安いワインでも、こんなに美味しいなんて!!気持ちって大事だと。
午前2時頃、うちのシリコンバレーのオフィスから連絡があって一瞬で酔いが醒めた。
「さっき警察が来て、マイケルにIRSからの召喚状を届けるから帰国日を教えて欲しいって言われたの」
エンジニアの声は震えてた。
「召喚状は渡されたの?」
「いいえ、置いていかなかった」